4月4日の開幕にむけたキャンプがスタートしました。今年のチームスローガンは「夢は叶う!」。ここにいる選手たちはみんなNPBに行く夢を見ています。夢は心に描き続けなくては叶いません。そして夢の実現に向けて努力しなくては叶いません。1年間、ひとりひとりがこのスローガンを忘れることなく、野球に打ち込んでいきたいと考えています。

 今季は6人の新人に、徳島から移籍した左腕の渡邊隆洋を加えてのスタートです。まだ実戦をやっていないので何とも言えませんが、すべてが1からのチームづくりだった昨年と比べれば、いい戦いができそうな気がしています。

 ルーキー投手ではドラフトで獲得した中田卓宏徳永雄哉がリリーバーとしておもしろい存在です。徳永はサイドスローの変則投法。中田は腕の振りがよく、まっすぐに力があります。タイプが異なるだけに、組み合わせて起用すれば、うまく1イニングを乗り切れるのではないかとみています。

 ソフトバンクに行ったキム・ムヨンの抜けたクローザーは角野雅俊に任せます。角野は徳島時代から数えればリーグ5年目。今年は27歳になります。NPBに行くには、そろそろラストチャンスです。

 彼の持ち味は何といっても188センチの長身から投げ下ろすスピードボール。しかし、先発をやっていると、どうしてもペース配分を考えなくてはいけません。球数を考えて打たせて取る投球を心がければ、球威は抑え気味になってしまいます。

 1イニング、2イニング限定にすれば角野のスピードが生きるのではないか。それがクローザー転向を本人に勧めた大きな理由です。昨年秋にこの話をしたところ、彼もその気になってくれました。先発ならマウンドに上がれない日も出てしまいますが、クローザーであれば毎日、登板の可能性があります。NPBスカウトの目にも留まりやすくなるはずです。

 NPBの各球団とも先発投手は大学、社会人の有力候補から確保するのが普通です。ただ、キムを獲得したソフトバンクがそうだったように、下位で中継ぎとして使える投手を欲しているところは少なくありません。角野にはストレートに加えて、フォークボールも持っています。どんどん三振を狙って、リリーバーとしてアピールしてほしいと願っています。

 角野が抑えでハマれば、セットアッパー役のサウスポー大澤亮と終盤の3イニングを託せます。さらに先程挙げた徳永と中田たちが中盤の1イニングを抑えてくれれば、ゲーム後半はかなり計算ができるでしょう。先発は少なくとも5回まで投げてくれればいい。そんな余裕をもってマウンドに上がってくれれば、さらに好投を引き出せるはずです。

 先発も移籍の渡邊、2年目の森辰夫西村拓也と3本柱は決まっています。昨秋も取り上げたように、森の成長は著しいものがありますね。167センチと上背はないものの、ボールは見にくく、バッターの手元でキレてきます。コントロールも良いため、打ちにくいタイプです。昨年、チャンピオンの香川に対して完封(6月22日)したように、もともと素質はありました。

 彼には昨年の終わりに「来年は先発で使う」とはっきり伝えました。年が明けた2月の自主トレ、一番動きが良かったのが森です。昨年は高校上がりで不安のあった体力面もだいぶたくましくなりました。ケガさえなければ、結果は自ずと出るでしょう。

 先日のオープン戦では、ソフトバンクに入団したキムが“プロ初勝利”をおさめました。彼は節目節目で連絡をくれますが、キャンプを経て調子は上がっているようです。最初はB班(2軍)スタートで心配しましたが、A班に昇格していい流れに乗っているのではないでしょうか。

 キムの活躍はチームの大きな励みになっています。ぜひ、このまま1軍に生き残って選手たちを刺激し続けてほしいものです。もちろん今年の目標は夢を叶えること。個人としてはドラフト指名、チームとしては優勝を目指して戦います。福岡にはホークスだけでなく、レッドワーブラーズもある! 結果を残して、ひとりでも多くのみなさんに球団を知っていただく1年にしたいものです。今シーズンも応援よろしくお願いします。


森山良二 (もりやま・りょうじ)プロフィール>: 福岡レッドワーブラーズ監督
  1963年7月20日、福岡県北九州市出身。福岡大大濠高時代は甲子園の出場経験ももつ。北九州大を中退後、ONOフーズを経て87年、ドラフト1位で西武に入団。パームボールを武器に88年には10勝をあげて新人王を獲得した。同年の日本シリーズでは第4戦で中日相手に完封勝利を収めている。93年に横浜に移籍し、95年限りで現役を引退。以降、横浜、西武で投手コーチ、トレーニングコーチを歴任した。現役時代の通算成績は86試合、14勝15敗、防御率4.21。


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