大物ルーキー大田泰示(巨人)の紅白戦デビューをキャンプ地の宮崎で見た。
 周知のように結果は3打数無安打2三振。第3打席は下手投げの会田有志の前に全て見逃しの3球三振に仕留められた。

 気になったのは2点。まずは構えるタイミングが遅いこと。ピッチャーの間合いでの勝負を余儀なくされていた。
 翌日(2月15日付)のスポニチ紙で評論家の中畑清氏が鋭い指摘を行っていた。
<「バッター大田」って場内アナウンスされているのに、なかなか出てきやしない。この回の先頭打者なのにベンチの中ですね当て、ひじ当てをつけ、ユニホームチェックをして手袋をはめて…。のんびりやってるんだ。>
 プロの水にはなれていない点を考慮してもバタバタ感は否めなかった。むしろ遅れるなら遅れるでピッチャーをジラすほどの図太さが欲しい。プロのユニホームを着ている以上、ルーキーもベテランも関係ないんだから。
 2点目は3つも続けてストライクを見逃した消極性。仮に高校野球では対戦したことのないタイプであったとしても、3球全て見逃しの三振はいただけない。
 本人もこれには反省したようで「あまりバットを振れなかった。課題すら見つけられなかった」と傷心の面持ちで語っていた。

 と、ここまでは随分、キツいことを書いたが、それだけ彼には期待しているということだ。
 長距離砲、とりわけ右の大砲は日本球界には数えるほどしかいない。まさしく大田はダイヤモンドの原石なのだ。
 この10年間、日本人の右バッターでホームランを40本以上放ったのは、01年の中村紀洋(当時大阪近鉄)小久保裕紀(当時福岡ダイエー)、02年の中村紀、04年の小久保(当時巨人)、05年の新井貴浩(当時広島)、07年の山崎武司(東北楽天)、08年の中村剛也(埼玉西武)、村田修一(横浜)とわずか6人しかいない。
 大田の何よりのアドバンテージは身長188センチ、体重90キロという体格だ。
 紅白戦で同じチームに入った木村拓也に試合後、大田の感想を尋ねると、「僕にもあの体が欲しいですね」と本音とも冗談ともつかぬ口調で語った。これは清原和博にも松井秀喜にも言えることだが、もし彼らの身長があと10センチ低かったら、あれだけのバッターにはなっていなかったはずだ。

 先述したように散々なデビュー戦ではあったが、光る部分もあった。第1打席、内海哲也の直球を引っかけてサードゴロに倒れたが、間一髪だった。
 大柄なためのっそりした印象を受けるが、ストライドが広いため、足は見た目以上に速そうだ。サードの小笠原道大がジャッグルしていたら、おそらくセーフになっていただろう。
 試合後、原辰徳監督は「輝いた目で打席に立ちサードを守る。これが原点。5年10年たっても今の気持ちで戦ってもらいたい」と語った。彼の打撃技術について論じるのは、2、3年先でもいいだろう。 

<この原稿は2009年3月8日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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