福井ミラクルエレファンツでは22日から全32選手での合同自主トレーニングがスタートしました。今年は天野浩一監督の母校、四国学院大学と香川県善通寺市のご協力を得て、気候、設備ともに素晴しい環境でやらせていただいています。選手たちの動きも軽快で、今シーズンこそは優勝しようと皆、はりきっています。
 前期後期ともに北陸地区最下位に終わった昨シーズンは、悔いがありすぎた1年となりました。その最大の要因は厳しいようですが、選手たちのレベルが私たち指導者が想定していた次元以下だったということです。例えばリーグ最多の86もの失策数を記録した守備。野球というスポーツは(ゴロの場合)捕球の後に正確な送球をして、初めてアウトが取れるわけです。それを積み上げて3つのアウトを取ることができる。ところが、昨季の福井は送球することがままならなかったのです。

 それはこれまでプレッシャーを受けながらも、それに打ち勝って普段のプレーができるような訓練をしてこなかったからでしょう。それができるようになるには、やはり実戦練習を繰り返し行うことが重要です。シートノックでは一つのポジションに2〜3人いますから、楽な気持ちで臨むことができます。しかし、紅白戦のような実戦形式になると、そのポジションには自分ただ一人しかいないわけです。誰にも相談することなく、自分で考えて守らなければいけない。こうしたプレッシャーの中でのトレーニングを積むことで、頭でアレコレと考えるよりも先に体が自然と動くくらいになってもらいたいと思っています。

 さて今季、球団に所属している選手は32人います。しかし、登録できる選手は25人。ですから少なくとも7人は練習生となります。そして天野監督は「最大25人だけであって、必ず25人でなければならないわけではない」という方針でいますから、登録の数は24人、23人などということも十分に考えられます。

 現在は全員が横一線。1年目の選手も2年目の選手も、これまでの実績や年齢に関係なく、開幕までの結果で登録選手を決定します。ですから、選手たちには自ずと競争意識が芽生えていることでしょう。なかでも2年目の選手たちは昨シーズン、非常に悔しい思いをしていますから、その雪辱に燃えているはずです。その気持ちを新人選手たちにも伝わることで、チームのレベルアップが図れるのではないかと思っています。

 昨シーズンは最下位に終わりましたが、エースの柳川洋平(平塚学園高−新日本石油−西多摩倶楽部)が福岡ソフトバンクに育成選手として指名されました。チームの成績はふるわなくても、一生懸命に頑張っていれば見てくれる人はいるものです。柳川の指名は選手たちにとってもモチベーションの上がる出来事だったに違いありません。

 今シーズン、ドラフト指名候補としては昨年、シーズン途中から入り、正捕手の座をつかんだ丸木脩平(敦賀気比高−横浜商科大)が挙げられます。ボールを捕ってから投げるまでの動作が素早く、昨シーズンもランナーをよく刺してくれましたし、捕球もどんどん巧くなっています。また、足はそれほどではないものの、バッティングは阪神、中日で活躍した関川浩一のようにバットをおっつけて狙い打ちできる技術を持っています。

 丸木の課題はリード面。これはまだ発展途上でもっと勉強しなければなりません。昨シーズンはエースの柳川からよく「なんでこのカウントで、そのボールなんだ」と注意されていました。その柳川も今シーズンはいませんから、自分で考えて投手陣をリードしていかなければなりません。それが丸木の意識を高め、いい方向に出てくれればと思っています。

 開幕は昨シーズンリーグ覇者の富山サンダーバーズとの対戦が決定しました。もちろん、優勝するためには絶対に負けられません。しかし、我々が目指しているのはBCリーグの頂点ではなく、独立リーグでの日本一。ですから、香川オリーブガイナーズと対等の試合ができるくらいまでレベルアップしたいと考えています。

 社会人野球では三菱ふそうや日産自動車など名門チームの休部や統合が相次いでいます。そんな中、我々は地元から応援・支援していただき、野球ができるわけです。その環境に甘えることなく感謝しながら、今シーズンも頑張りたいと思います。


野田征稔(のだ・ゆきとし)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツコーチ
1941年12月5日、長崎県出身。PL学園高校、PL教団を経て1963年秋に阪神に入団。70年には88試合に出場し頭角を表し始めると、翌年よりセカンドのレギュラーとして定着。72年にはリーグ最多となる21個の犠打をマークした、75年に現役を引退。その後は阪神のマネジャー、二軍コーチ、フロント、二軍監督、スカウトを務めた。2008年、福井ミラクルエレファンツの野手コーチに就任した。


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