『DREAM』『戦極』両イベントで各々のフェザー級グランプリがスタートする。総合格闘技の主役はヘビー級、時に桜庭和志らが盛り上げたミドル級だったわけだが、果たして軽量級ファイトがファンを、どこまで熱くさせてくれるのかを注視したいと思う。
 日本の総合格闘技界において60キロ台前半の選手層は厚い。これは“格闘技王国”ブラジルでも同じことが言える。フェザー級GPは非常にハイレベルな闘いを生む可能性を秘めているのだ。

 まずは3月8日、さいたまスーパーアリーナ『DREAM7』で開幕するフェザー級GP。1回戦のカードは次の通りだ。

・今成正和(Team ROKEN)VS.山本篤(KRAZY BEE)
・高谷裕之(高谷軍団)VS.キム・ジョンウォン(韓国/チーム・ユン)
・前田吉朗(パンクラス稲垣組)VS. ミカ・ミラー(米国/アメリカン・トップチーム)
・チェイス・ビービ(米国/HITスクワッド)VS.ジョー・ウォーレン(米国/チーム・クエスト)
・大塚隆史(AACC)VS. ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル/レボリューション・ファイトチーム)
・西浦“ウィッキー”聡生(STGY)VS. エイブル・カラム(米国/カラム・グランドファイティング)
<この他、所英男(チームZST)VS.DJ.taiki(フリー)は4月5日、名古屋・日本ガイシホールでの『DREAM8』で行われ、山本“KID”徳郁(KRAZY BEE)はシード選手として2回戦から出場する>

 DREAM初参戦の選手がほとんどで、ファンにとってもなじみの薄い名前が多い。そんな中、存在感が際立つのは、2回戦から登場する山本“KID” 徳郁。非常に予想の難しい激戦となる1回戦を勝ち上がった男たちが「打倒KID」に闘志を燃やすというのが、DREAMフェザー級GPのメインストーリーとなろう。実績を見ればKIDが「格上」の存在ではあるが、その強さもリアルタイムでは絶対とは言い切れない。このトーナメントでKIDを倒した男が一躍、スターダムにのし上がることになる。

 続いて3月20日、代々木第2体育館での『戦極〜第七陣〜』でスタートする戦極フェザー級GP。こちらは1回戦のカードが主に「日本人VS.外国人」となっている。

・日沖発(ALIVE)VS.クリス・マニュエル(アメリカン・トップチーム)
・小見川道大(吉田道場)VS.L.C.デイビス(米国/アメリカン柔術アカデミー)
・門脇英基(和術慧舟會東京本部)VS.ナム・ファン(米国/Ma Du アカデミー)
・金原正徳(パラエストラ八王子/チームZST)VS.キム・ジョンマン(韓国/CMA KOREA)
・石渡伸太郎(GUTSMAN修斗道場)VS.ジャン・チャンソン(韓国/CMA KOREA)
・川原誠也(パンクラス P's LAB横浜)VS.ニック・デニス(カナダ/ローニンMMA)
・山田哲也(しんわトータルコンバット/チームZST)VS.ロニー・牛若(米国/チーム・トロージャン)
・マルロン・サンドロ(ブラジル/ノヴァ・ウニオン)VS.マット・ジャガース(米国/チーム・ウルフパック)

 本命不在。『DREAM』のKIDのように軸となる選手はいないが、その分、新たなスターが出現する予感が強く漂う。先のライト級GPでは、パンクラスの北岡悟が優勝した。その後、五味隆史(チームラスカル久我山)も破ったことで、北岡の名は広く知られるようになった。この16選手の中に、第2の北岡が潜んでいるのかもしれない。

 両団体のフェザー級GPは、かつて『PRIDE』が開いたヘビー級GP、ミドル級GPに比べれば地味なものではある。広く名を知られた選手がエントリーしているわけではない。多くが「原石」なのだ。しかし、だからこそ面白いとも思える。新たなファイティング・スターが誕生する瞬間までの過程を凝視したい。

 また今後、軽量級戦線を活性させるためにも、ひとつのことを提案したい。折角、両団体で同時期にフェザー級GPを開催するのだ。ならば、このフェザー級トーナメントで決されるDREAM王者と戦極王者が大晦日に対決してはどうだろうか。

 同じ総合格闘技であり、僅かなルールの違いを埋めるのは難しくない。ウエイト・リミットも『DREAM』が65キロ以下、『戦極』は63キロ以下。統一王座決定戦は、間をとって64キロ以下に設定すれば良いではないか。総合格闘技の軽量級の闘いを『K-1 MAX』のように光らせるためには、そこまで踏み込む覚悟が両団体に必要だと感じる。

----------------------------------------
近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜(文春文庫PLUS)』ほか。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
◎バックナンバーはこちらから