開幕2連戦は1勝1敗。昨年は連敗スタートだったことを思えば、まずまずの滑り出しと言えるでしょう。特に2戦目のホーム開幕戦での白星は大きい1勝となりました。

 この試合で先発したのは吉川岳。2年目のサウスポーです。昨年は故障もあり、シーズン途中から練習生として契約していました。開幕前に再び選手登録を行い、その日は今季初登板。尻上がりに調子をあげ、気づけば6安打2失点で完投勝利をおさめました。

 予想以上の結果と思われるかもしれませんが、彼はもともと、このくらいの投球ができる力を持っていました。昨年から楽しみにしていただけに、ようやく期待通りの働きをしてくれたという感想です。

 何より彼の課題は精神面にありました。マウンドに上がると慎重になりすぎ、ストライクが入りません。そして苦し紛れに置きに行ったボールを痛打される。この悪循環を繰り返していたのです。
「打たれてもいい。どんどん攻めていけ!」
 そんな話を何度も本人にしました。四球ではチームにも自分にもプラスになりません。しっかり腕を振ってストライクゾーンに投げ込めば、打者が空振りすることだってあるでしょう。打ち損じる可能性もありますし、いい当たりでも野手の正面を突くかもしれません。当たり前の話ですが、まず投手がストライクを投げないと試合にはならないのです。

 迎えた今シーズン、オープン戦から彼の悪い癖は改善されつつあります。新たに投手担当として加わった佐伯和司コーチのアドバイスを受け、いいボールがどんどん投げられるようになりました。何より昨年1年間、苦しい思いをしたことが精神的にプラスになったはずです。いい意味での思い切りの良さが出てきました。

 復帰登板での完投勝利は、本人にとっても大きな自信になったことでしょう。高知の先発陣は昨季15勝をあげた野原慎二郎を除いて、まだまだ流動的です。吉川にはベネズエラからきたメドラーノ、地元出身の山中智貴とローテション入りを競わせていました。ただでさえ、投手の頭数は吉川を含めても8人。1人でも計算できる投手が出てこないと優勝は見えてきません。彼がまず結果を残してくれたことで、チームに波及効果が出てくると感じています。

 先発が決まれば、リリーフの役割も明確になってきます。絶対的な守護神だった上里田光正に代わる新たなクローザーは3年目の山隈茂喜が有力候補です。とはいえ、まだ決定したわけではありません。故障で出遅れている新人の升田大助(三重中京大中退)たちにもチャンスはあります。こちらも試合を重ねる中で競わせていく予定です。

 打線は昨年より一段と強力になりました。なんといってもベネズエラから来た新4番にはカラバイヨが座ります。オープン戦でもホームランを連発し、スイングの鋭さは群を抜いています。5日の試合では敬遠気味のボールが甘く入ったところを逃さず打って、先制タイムリー。勝負強さも魅力です。打つだけでなく、守備、走塁もソツなくこなしますし、野球に対する取り組みもまじめ。まさにチームの中心として活躍してくれるでしょう。投手はまだまだ未知数の部分が多いだけに、当面は打って打って打ちまくって勝ち星を伸ばしていきたいものです。

 今年は各球団に大きな戦力差はありません。昨季以上の混戦が予想されます。とにかく1戦1戦をおろそかにせず、最後まであきらめずに戦うことが大切です。4年ぶりのV奪回へチーム一丸となって頑張ります。高知のみなさん、熱い応援をよろしくお願いします。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸(元長崎監督)と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は千葉ロッテの内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。




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