いよいよ開幕まであと3日となりました。信濃グランセローズでは今年もオープン戦後に上伊那郡南箕輪村の大芝高原野球場で2次キャンプを約10日間の日程で行ない、最終調整を行ないました。徐々に選手同士の間でも競争意識が芽生えてきており、例年以上にいい仕上がり具合を見せてくれています。開幕は群馬ダイヤモンドペガサスとの2連戦。チーム一丸となっていいスタートを切りたいと思っています。
 さて投手陣ですが、今年は3人の新人選手が入ってきました。大竹秀義(春日部共栄高)、芦田真史(福知山成美高−大阪経済大)、星野真澄(埼玉栄高−愛知工業大−バイタルネット)です。3人とも即戦力として期待でき、既存選手にもいい刺激を与えてくれています。

 その新人選手も含め、今年は1次キャンプから既に先発候補とリリーフ候補に分け、紅白戦やオープン戦に臨みました。先発候補は仁平翔(常総学院高)、給前信吾(横浜商大高)、高田周平(関西創価高−創価大)、芦田、星野の5人です。なかでも現在、頭一つ抜けているのが新人サウスポーの星野です。140キロ以上のストレートは威力十分。他にカットボール、チェンジアップを持っています。彼はとにかく投げることが大好き。練習でも黙っているといつまでも投げ続けているので、逆にこちらがセーブさせているくらいです。入団前は「コントロールにやや難あり」と聞いていたのですが、紅白戦、オープン戦で見る限り、そう大きく崩れる心配はなさそうです。

 とはいえ、課題をあげるとすればやはりコントロールですね。特に左打者を抑えなければ話になりませんので、インコースを攻めて外で勝負するなどの組み立てがきちんとできるくらいのコントロールが欲しいですね。また、下手に変化球でかわそうとするところがあります。変化球はあくまでも真っすぐあってのもの。せっかく140キロ以上の速さがあるのですから、もっと真っすぐ中心のピッチングをしてもらいたいと思っています。

 昨シーズン、前期の反省をいかして後期には安定したピッチングを見せてくれたのが仁平です。今年はオフからしっかりとトレーニングに励んでおり、非常に順調にきています。3月24日の新潟アルビレックスBCとのオープン戦で先発し、6回途中まで1失点と結果も残しています。今シーズンこそ、前期から活躍してくれることでしょう。とはいえ、NPBへの目標を達成するにはまだまだ足りないところはたくさんあります。今後も、さらなる努力をしていってほしいと思います。

 決して目立った存在ではありませんが、地道な努力で虎視眈々と先発の座を狙っているのが高田です。彼は非常に真面目で練習量はチームの誰にも負けません。それほど球にスピードはないのですが、コントロールがいいのでインサイドをうまく突いていけば、十分に先発として試合をつくることができます。ただ真っすぐ、カーブ、スライダーを持っていますが、ここという時の決め球がありません。そこで今オフからチェンジアップの習得に必死です。実戦でも投げ始めていますが、高めに抜けたりワンバウンドしてしまうことも。精度はまだまだですが、これまで高田と対戦してきた打者は、変化球はカーブとスライダーという頭でくるでしょうから、そこでチェンジアップを見せれば、印象は違ってくるはず。それだけでもピッチングの幅を広げてくれますので、恐れずにどんどん投げていってもらいたいと思います。

 高田は真面目さゆえ、投手としては少し大人しすぎるところがあります。もう少し気持ちを前面に押し出してほしいと思っていました。ところが、自分でも同じようなことを感じていたのでしょうか。今年は試合で気合いの入った声が出ていて、私もチームメイトも「今年の高田は違う!」と感じています。ファンの皆さんにも、昨年までとの違いをぜひ見てほしいと思います。

 昨シーズンは抑えにまわっていた給前も今シーズンは先発に復帰する予定です。さらに故障で調整が遅れていた大竹、佐藤広樹(安田学園高−徳島インディゴソックス)も加わります。大竹はヒジに不安を抱えていたことから、本人は「大丈夫」とは言うものの、あまり最初から無理をさせたくありませんでしたので、スローペースで調整させていました。本格的に投げ始めたのはここ最近のことですが、調子は良さそうです。

 今月4日(土)には開幕前の最後の実戦として佐久コスモスターズと練習試合を行ないました。そこで、2番手に大竹を上げました。彼にとっては今シーズン初めての実戦マウンド。本人は「緊張しなかった」と言っていましたが、自然と力が入ったのでしょう、先頭打者にいきなりストレートの四球を出してしまいました。しかし、その後は併殺打とライトフライに抑えました。当日は雨が降っており、非常に寒かったことを考えれば、まずまずの出来だったと思います。

 一方、佐藤はオフに右ヒジの遊離軟骨除去手術を行なったため、約1カ月遅れの調整となっています。リハビリも順調で、このままでいけば5月後半には復帰することでしょう。そうなると、佐藤はもともとエース格の投手ですから、先発陣の競争はますます激しくなります。選手としては大変ですが、今年は例年以上に層が厚く、コーチの私にとってはありがたいことです。

 リリーフ候補には梅澤敏明(長野工業高)、小高大輔(武相高−富士大学−日本ウェルネス専門学校)、高森一生(伊香高−甲賀健康医療専門学校−石川ミリオンスターズ)の3人です。梅澤は昨シーズン、前期は制球力不足でアタフタしていましたが、後期には貴重なセットアッパーとして活躍してくれました。今シーズンにかける思いも強いようで、オフも毎日練習に顔を出していましたし、キャンプでも積極性が見られました。おかげで球威も伸びてきています。

 梅澤の持ち球は130キロ台のストレートとカーブの2種類でしたが、今シーズンはそれに落ちる系の変化球が加えられました。相手は「変化球はカーブしかない」と思っているでしょうから、有効なボールとなることでしょう。まだ完璧ではありませんが、どんどん実戦で投げて逆に打たれることで、自分のモノにしていってほしいと思います。

 梅澤は非常に素直な性格で人の話をきちんと聞こうとします。まだ22歳と若く、チームには同じくらいの年齢の選手がたくさんいますので、昨年までは練習中も他の選手としゃべりながらやっていた様子が多く見受けられました。しかし、今年はそういったことは全くなく、一人で黙々と取り組めるようになっています。3年目ということもあり、そろそろ練習も本人に任せようかなと思っています。

 悩みどころは誰を抑えにするのか。当初は高森をと考えていましたが、紅白戦やオープン戦でなかなか結果が出ていません。抑えはそのゲームの締めくくりを任されるわけですから、チームの顔と言ってもいい存在。佐々木主浩さんのフォークのように、絶対的に自信をもつ勝負球と、そして安定感が必須です。そう考えると現在は残念ながら抑え候補が不在の状態です。先発候補の一人である星野は先述したように毎日でも投げられますし、何より肩をつくるのが早い。ボールにスピードもありますし、もしかしたら抑えにまわってもらうかもしれません。

 昨シーズンのチーム投手成績はリーグ最下位。打線に援護してもらって勝った試合も数多くありました。しかし、今シーズンの投手陣は過去2年と比べても非常にレベルが高く、私自身も期待感でいっぱいです。今シーズンは、ぜひ「投手で勝った」と言われるようなゲームをして優勝したいと思います。 

島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:信濃グランセローズピッチングコーチ
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝あげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年より信濃グランセローズのピッチングコーチに就任した。


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 今回は信濃・島田直也コーチのコラムです。「目覚めよ! 未完の大器」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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