開幕して1カ月が経ちました。群馬ダイヤモンドペガサスは7勝6敗1分けで、上信越地区2位。首位の新潟アルビレックスBCとは2.5ゲーム差です。昨シーズンは地区王座を獲得したものの、リーグチャンピオンの座に就くことはできませんでした。今シーズンの目標はもちろん、昨シーズンの雪辱を果たし、頂点に立つこと。そのために今シーズンは守備を重視していたわけですが……。正直なところ、私がやりたいと考えていたものとは程遠い野球になっているというのが現状です。
 開幕前、私がチームの課題として考えていたのが?投手の柱を整備すること?捕手はバッターよく観察して弱点を見極め、状況判断しながらの配球をすること?野手は打球方向を見据えた守備で点を取られない野球をすることでした。ところが、開幕直後からエラーが続出。投手を支えるどころか、バックが投手の足を引っ張っている状態で、ムダな失点も少なくありません。これではチャンピオンどころの話ではありません。

 昨シーズンと比べ、他球団はどこも大きく戦力アップしています。投手では新潟や福井ミラクルエレファンツにはNPB出身者の若手が加入していますし、野手はどこもスイング力が増しており、甘い球を見逃しません。これまでのようにストライク優先のピッチングでは抑えることが難しくなっています。

 一方の群馬はというと、他球団に比べると昨シーズンからの伸び幅が小さいように感じています。昨シーズン、1年目ながら後期優勝、地区チャンピオンになったことで慢心しているのかもしれません。それは開幕前から危惧していたことでした。例えばノックをしていても、練習の時から実践を見据えて速さと正確さを意識しなければならないはずなのに、ミスをしてもそのままで終えようとすることも少なくありませんでした。その度に注意を促してきましたが、やはり不安は的中してしまいました。現在、エラー数はリーグ最多の25。今後は気を引き締めなおして態勢を整えていこうと思っています。

 また、昨シーズン以上の成績を出すためには、選手一人ひとりがそれぞれの課題を克服し、レベルアップすることも必要です。そこで私はチーム内での競争心をあおぐためにも、真摯に練習に取り組んでいる選手や、課題を克服してオープン戦などで結果を出した選手には出場機会を多く与え、ちょっとしたミスをしてもすぐに外したりはせず、使い続けていくことにしました。

 その代表的な例が小西翔(高田高−慶応大−新潟アルビレックスBC)です。昨シーズンまでは出たり出なかったりを繰り返していた選手ですが、今シーズンは開幕から全試合先発出場し、クリーンアップの一角を担っています。昨シーズンまでの彼にはスイングのパワーが不足していたのですが、必死のトレーニングでその課題を克服。現在では故障した井野口祐介(桐生商高−平成国際大−富山サンダーバーズ)の代わりに4番に座っています。5月5、6日の石川ミリオンスターズ戦、そして9日の新潟戦と小西は3試合連続で無安打に終わったのですが、前述した通り、私は彼を使い続けました。すると10日の新潟戦では決勝2ランを放ち、見事期待に応えてくれました。

 また、成長著しいのが捕手の川村修司(帝京高−REVENGE99)です。昨シーズンはどちらかというと廣神聖哉(前橋育英高)の影に隠れ、2番手、3番手にまわっていましたが、今シーズンは出場機会も増えています。彼は不器用ではありますが、自分に厳しさをもって懸命に練習に取り組んでいます。そのため、昨シーズンよりもスローイングのスピードが増していますし、どんなボールでも「止めてやる!」という姿勢が顕著に表れています。投手からも信頼されてきており、川村を指名する投手も出てきているほどです。

 投手での成長株は小暮尚史(児玉高)と越川昌和(多古高−上武大−サウザンリーフ市原)です。小暮は変化球のキレ、越川は低めへのボールの制球とカーブのキレといった昨シーズンまでの課題をオフの間に自ら克服して3月のキャンプに臨んできていました。オープン戦でも結果を出し、現在では2人とも先発の柱になりつつあります。

 現在、チームは決して調子がいいわけではありません。ミスも多く、歯痒さを感じる試合も少なくありません。しかし、シーズンはまだ始まったばかり。勝負はこれからです。選手たちには普段の練習から常に高い意識をもち、貪欲な姿勢とチャレンジ精神をもってレベルアップを図ってもらいたいと思っています。


秦真司(はた・しんじ)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサス監督
1962年7月29日、徳島県出身。鳴門高校3年時には春夏連続で甲子園に出場。法政大学時代の84年、ロサンゼルスオリンピックに野球日本代表として出場し、公開競技ながら金メダル獲得に貢献した。翌年ドラフト2位でヤクルトに入団し、4年目には正捕手として122試合に出場した。その後、外野手に転向し、90年代のヤクルト黄金時代を築き上げる。99年に日本ハム、2000年に千葉ロッテへ移籍し、その年限りで現役を引退した。その後はロッテの打撃コーチや中日の捕手コーチ、解説者として活躍。昨季より群馬ダイヤモンドペガサスの初代監督に就任した。


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