まずは、このたび選手が起こした不祥事について、現場を預かる指揮官としてファンの皆さんにお詫び申し上げます。
 今回の件で出場停止処分を受け、先週末まで13試合、チームを離れていました。ここまでは10勝9敗3分の3位。開幕10試合のもたつきが響いています。

 波に乗れなかった原因は投手陣の不調です。開幕戦(4月4日)では川西祐太郎が勝利投手になったものの、徳島相手に10安打を浴びました。2戦目(4月5日)の香川戦では近平省悟が4回途中で5失点KO。3戦目の香川戦(4月10日)も川西が5回途中6失点……。計算していた先発投手がなかなか結果を残せませんでした。

 何より誤算だったのは、昨季7勝をあげた高木大輔、若い篠原慎平が期待通りのピッチングができなかったことです。高木は川西が打ち込まれた香川戦、1点リードの最終回に今季初登板。簡単に2死を取り、勝利は目前のところへ来ていました。ところが、そこから四球を連発。最後は逆転サヨナラの2塁打を浴びてしまったのです。先発に起用した4月18日の徳島戦でも5回途中6失点と内容はよくありませんでした。

 もっと深刻だったのは篠原です。5試合に登板して防御率は12.15。結果が出ない焦りもあってか力みが入り、バランスを完全に崩していました。ブルペンではいいボールを投げられるだけに、これはもったいない。彼にはGW期間中、フォームも含め再調整をしてもらいました。

 そのかいあって17日の香川戦では1回を三者凡退。感触は良くなりつつあります。高木も篠原も出だしでつまづいただけに、1度、自分の満足いく投球をして自信を取り戻すことが大切です。個々のボールはいいものを持っています。早く去年の良かった時期の投球を思い出してほしいものです。

 一方、投手陣で頑張ってくれたのが4月の月間MVPに輝いた能登原将(西濃運輸)です。前回のコラムでおもしろい存在と紹介した右のサイドスロー。開幕から主に中継ぎとして安定した投球をみせ、GWからは先発の一角に割り込んできました。15日の香川戦では負け投手になったものの、相手のバットを何本もへし折りました。バッターの胸元をしっかり突けるのが彼の良いところです。これからも先発、中継ぎとフル回転してもらいたいと考えています。

 今後はストレートの球速を上げることが課題になるでしょう。MAX145キロと聞いていましたが、現状は130キロ台がほとんど。サイドから140キロ台のスピードボールが常時出るようになれば、バッターにとって厄介です。タイプ的には東京ヤクルトの館山昌平に似ています。館山のように荒々しさとコントロールを兼ね備えたピッチャーに伸びれば、NPBがみえてくるはずです。

 前期の残りは18試合。上位の長崎、香川を上回るためには、5連勝、6連勝とまとまった白星が必要になります。少なくとも3連戦を2勝1敗以上のペースで勝っていかなくてはいけません。そのためには投手陣の安定は不可欠です。雨で流した試合もあるため、終盤は過密日程も予想されます。逆転優勝のカギは先にあげた高木、篠原が握っていると言っても過言ではないでしょう。

 不祥事で失った信頼を取り戻すためには、我々はグラウンドで結果を残すしかありません。何の罪もない選手たちに重い十字架を背負わせたくはないのですが、一投一打をファンは今まで以上に厳しい目で見つめています。「1打席、1球に勝負をかけよう。闘争心を上乗せして戦おう」。選手には、そんな話をしました。お客さんに伝わるプレーができれば、結果は後からついてくるはずです。今年のスローガン「全力疾走、全力投球」を改めてチーム全体で徹底し、週末からの徳島3連戦に臨みたいと思います。


沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げ、08年は悲願の初優勝(後期)に導いた。






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