前期も残り12試合となったところで、福岡は12勝12敗4分の4位。首位・長崎と6ゲームも差をつけられてしまいました。九州のライバルとしては悔しい限りです。ここまで波に乗れない理由は期待していた選手たちの度重なる誤算があります。

 まずケガ人が多い。今、チームでは新型インフルエンザならぬ肉離れが流行しています。俊足のルーキー増田康弘、昨季ショートでベストナインを獲った國信貴裕、そして前年首位打者の西村悟……。レギュラーの野手が次々に離脱してしまいました。現状は投手の倫太郎を代走に起用しなくてはならないほど、頭数が足りません。西村はなんとか前期の最後に戻ってきそうですが、他の2人は復帰は後期にズレこみそうです。ここまで同じケガが続出した背景は、チームとしてアップや疲労回復のケアが足りなかったのかもしれません。トレーニングの中身を見直さなくてはいけないと思っています。

 中でも増田は開幕から一時、3割を超えるアベレージを残し、トップバッターとして想像以上の働きをみせていました。もともと外野守備と足は入団当初よりレギュラークラス。残る課題は打撃だけでしたから、今後の成長が楽しみでした。その矢先のケガですから本当に痛い。とにかくスカウトが多くやってくる夏までに、万全の状態に戻してほしいところです。

 投手陣でも期待していた渡邊隆洋森辰夫西村拓也の先発3本柱が思うような結果を残せていません。徳島から移籍した渡邊は防御率が5点台(5.77)。実績のある左腕として投手陣の中心で頑張ってほしかったのですが、得意のスライダーのキレ、コントロールがともに欠けています。この内容では先発から外さざるを得ないでしょう。さらには西村拓も左肩に痛みが出て本調子ではありません。

 一番の大誤算は2年目の森です。開幕までキレのあるボールを投げていただけに、3勝3敗、防御率5.69という成績は不思議でなりません。納得のいく投球ができていないことは彼自身が一番、よくわかっています。ついに先日、僕にこんな悩みを打ち明けてきました。「力がボールに伝わらないんです……」。つまり、リリースポイントの感覚が本人の中で完全にズレている状態に陥っています。

 ここを改善するにはキャンプでやっていた練習をもう1度やり直すことです。まずやらなくてはいけないのは遠投を増やすこと。腕をしっかり振ることの大切さを思い出してほしいと思います。次は内野でサードからのスローイング練習です。ここでは下半身を使い、体重をしっかり前に乗せて強いボールを投げる感覚を取り戻してもらいます。春先はいいボールを投げていただけに、きっかけさえつかめば調子はすぐに戻るはずです。その日が1日も早くやって来ることを祈っています。

 一方、うれしい誤算といえるのは新人右腕の徳永雄哉(愛媛大)。最初はリリーフで考えていた投手が先発ローテーションの一角を占めてくれています。ここまでチームトップタイの4勝をあげました。彼の投法はアンダースローに近い横手投げ。西武の岩崎哲也のように一度、後ろを向いて投げる変則ピッチャーです。

 球速は120キロちょっとですが、うまく打者のタイミングを外し、結果を残しています。先発としては体力面で心配がありましたが、球数を制限しつつ3試合、4試合と登板を繰り返すうちに、長いイニングを投げられる体になってきました。先発としてひとつめのハードルは越えたように思います。

 彼がこれから克服すべき課題は球威をアップさせることです。現状ではストレートと変化球で緩急がつかないため、何度が対戦するうちにバッターは慣れてくるでしょう。コントロールがそこそこ良いため、ボールがまとまったところに集まるのも良し悪しです。本来、あれだけ右打者の後ろ側から放られるとバッターはイヤなもの。正直、やや荒れ球のほうが相手は踏み込みにくいと思っています。

 徳永のように経験を積ませれば、伸びてくる存在は、チーム内にもまだまだいるはず。前期の逆転優勝は厳しい状況になってしまいましたが、残り12試合は出番の少ない選手を積極的に起用し、後期こそは巻き返します。ファンのみなさん、引き続き応援よろしくお願いします。


森山良二 (もりやま・りょうじ)プロフィール>: 福岡レッドワーブラーズ監督
  1963年7月20日、福岡県北九州市出身。福岡大大濠高時代は甲子園の出場経験ももつ。北九州大を中退後、ONOフーズを経て87年、ドラフト1位で西武に入団。パームボールを武器に88年には10勝をあげて新人王を獲得した。同年の日本シリーズでは第4戦で中日相手に完封勝利を収めている。93年に横浜に移籍し、95年限りで現役を引退。以降、横浜、西武で投手コーチ、トレーニングコーチを歴任した。現役時代の通算成績は86試合、14勝15敗、防御率4.21。


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 今回は森山監督のコラムです。「首位・長崎、強さの理由」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。


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