谷津嘉章(日本障がい者レスリング連盟)<後編>「死ぬまでに国際大会開催を!」

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二宮清純: 2023年にはNPO法人日本障がい者レスリング連盟(NCWA)を立ち上げました。しかし競技のルールやカテゴリー分けはこれからだと……。

 

谷津嘉章: 同じ障がいのある者同士が戦うのが理想だけど、絶対数が少ない。腕に障がいのある人と、足に障がいのある人が戦うことはできるのか。今はレスリング連盟の審判を集め、ハンディキャップの設定を含めたルール作りを行っているところです。

 

二宮: 世界にない新しいスポーツということですから……。

 

谷津: そうなんです。イチから始める大変さはもちろんあります。時々、自分がやっていることは無理なことなのかもしれないと思ったり、相手にされないんじゃないかと不安になることもある。でも、やるっきゃない、と思っています。今、日本は障がいの有無に関係なくインクルーシブな社会を目指している。その社会の流れを利用し、障がい者レスリングを広めることに尽力したい。いずれは第1回目の日本選手権、世界選手権を開催したいと思っています。

 

伊藤数子: パラリンピックの正式競技に採用されることを目指しているとうかがいました。

 

谷津: はい。そのためには公益財団法人日本レスリング連盟の協力が必須です。私たちの連盟所在地は都内に置いていますから、まず東京都障害者スポーツ協会に相談に行きました。職員の方から聞いた話によると、公益財団法人日本パラスポーツ協会の加盟団体になるには、政令指定都市に5つの支部がないと認められないそうなんです。それをクリアするために、日本レスリング連盟を退職された方をスカウトし、各支部を任せたい。全国各地でクリニックなどを行い、普及・育成に努めていきたいと考えています。

 

 

挑戦あるのみ!

 

伊藤: NPO法人日本障がい者レスリング連盟の英語名を「NIPPON CHALLENGED WRESTRING ASSOSIATION」としているのですね。

 

谷津: そうなんです。パラレスリングにチャレンジする人たちをサポートし、新たな競技を発展させるための連盟だからこそチャレンジという言葉を付けました。私自身、「何事もチャレンジ! 挑戦だ!」と口癖のように言ってきましたからね。

二宮: ここまで普及の手応えは?

 

谷津: まだまだこれからですよ。待っていても何も出てこない。自分からどんどん仕掛けていかないと……。それには取材やイベントも含め、いろいろなところに顔を出すことが大事です。ネットワークをひとつでもふたつでも増やしていく。1人でも多くの方に障がい者レスリングについて知っていただき、仲間を増やしていきたいです。

 

伊藤: 昨年は谷津さん自身が全日本社会人選手権と全国社会人オープン選手権に出場されました。

 

谷津: 試合には敗れてしまいましたが、障がい者レスリング啓発のために出場しました。パラリンピックの正式競技になっている格闘技は柔道、テコンドーだけです。なぜレスリングはないのか。そこに挑むことが自分の宿命だと思っています。

 

二宮: 世界にも普及していくことも大事でしょう。

 

谷津: もちろんです。来年は世界レスリング連合(UWW)のあるスイスに行こうと考えています。UWWの前身・国際レスリング連盟(FILA)の副会長を務めた福田富昭さんの力を借りて、ロビー活動のようなこともしなければなりません。

 

二宮: やるべきことは山積みですね。

 

谷津: そうですね。プロレスラーの先輩方も早く逝ってしまった。一般男性の平均寿命を見ると約80歳。私は現在68歳ですから、あと干支が一周すれば、80歳。時間はあまり残っていません。死ぬまでに国際大会の開催は、必ずやり遂げたいですね。

 

(おわり)

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谷津嘉章(やつ・よしあき)プロフィール>

NPO法人日本障がい者レスリング連盟統括。1956年7月19日、群馬県出身。日本大学在学中の1976年、モントリオール五輪に出場し、男子フリースタイル90キロ級で8位入賞。1980年モスクワ五輪は日本のボイコットで出場ならず。同年、新日本プロレスに入団し、プロレスデビューを果たした。全日本プロレスではジャンボ鶴田とのオリンピアンコンビで世界タッグ王座を獲得。2010年、現役引退。2019年6月に糖尿病のため右足を切断する手術を受けた。2021年6月に義足レスラーとして復帰を果たす。2023年にNPO法人障がい者レスリング連盟を設立し、障がい者レスリングの普及に尽力している。

 

>>NPO法人日本障がい者レスリング連盟

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NPO法人STAND

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NPO法人STAND代表の伊藤数子さんと二宮清純が探る新たなスポーツの地平線にご期待ください。

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