前期は球団ワーストの5位という結果に終わってしまいました。低迷の要因は投手陣のコマ不足。故障などもあり、ひどい時にはチームで5人しか使える投手がいませんでした。翌日の先発を考えれば、試合に起用できるのは実質4人です。長い野球人生の中で、こんな経験は初めてでした。

 それでも試合は待ってくれません。先発から中1日でリリーフに回したり、中継ぎを連投させたり、苦しいやりくりが続きました。野原慎二郎吉川岳といった主力の疲労はピーク。文句も言わず、投げてくれましたが、ボールに本来のキレはありませんでした。投手陣にはかなりの負担を強いる形になり、申し訳なく思っています。

 それでも、ようやく6月に3投手を獲得できました。まずは元阪神の伊代野貴照。阪神時代、サイドスローで主にリリーフをやっていた経験も買って、彼にはクローザーを任せることにしました。球速やコントロールはいまひとつとはいえ、いきなり3試合連続セーブ。慣れれば、さらにいい投球をみせてくれることでしょう。

 昨年の上里田光正もそうでしたが、後ろがしっかりすればベンチは迷わず継投できます。先発も思い切って投げられます。攻撃も終盤までに1点でもリードを奪う目標ができます。彼の加入は高知にとって大きなプラスです。

 またトライアウトで紀州レンジャーズからやってきたジョン・デキと元群馬ダイヤモンドペガサスの川本裕貴が入団しました。ジョンはリーグでは珍しいアンダースロー。これといったボールはありませんが、のらりくらりと相手をかわせるタイプです。吉川、野原に次ぐ第3の先発として考えています。元楽天・ドミンゴが復帰するまでは、この3人に山中智貴を加えた4人でローテーションを回すつもりです。

 攻撃面では8本塁打とリーグ2位のカラバイヨが4番、リーグトップタイの打率.384をマークしたYAMASHINが1番と打順を固定して戦うことができました。その反面、持ち味である機動力があまり使えていません。昨季、YAMASHINの盗塁は59個。今季は前期で19個とペースが落ちています。

 原因はいくつか考えられます。第一に相手バッテリーの警戒が高まっています。昨年に比べれば、牽制は明らかに増えましたし、クイックの技術も全体的によくなりました。もうひとつは打順の巡り合わせです。一発のあるカラバイヨが後ろに控えていますから、盗塁失敗でアウトになるのはもったいない。盗塁で一塁が空けば、歩かされる可能性も出てきます。

 ただ、6月中旬より5年目の梶田宙が肉離れより復帰し、クリーンアップを任せられる人材が増えました。一時はボール球に手を出して打撃を崩しかけていたカラバイヨも、勝負さえしてくれればガンガン打つでしょう。ベンチからもエンドランや盗塁を積極的に仕掛けて高知らしい野球を展開します。

 懸念の投手不足も解消し、もう言い訳はできません。監督就任から2年、そろそろファンの期待に応えなくてはならない時期です。とはいえ、選手たちは結果を求めすぎる必要はありません。積極的にプレーしてエラーしたり、打てなければ、使った監督が悪いと思えばいいのです。これは僕がプロ入りした時、プレーイングマネジャーだった野村(克也)さんの教えでもあります。

 逆に言えば、選手たちが思い切ってやってくれれば、成績は自ずとついてくる。それだけの手ごたえを感じています。目標はただひとつです。ファンの皆さん、球場でお待ちしています。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸(元長崎監督)と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は千葉ロッテの内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。





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