右肩の張りを理由に、さる6月21日、今季2度目の故障者リスト(DL)入りした。もう、かつての怪腕は戻ってこないのか。
 レッドソックスの松坂大輔が肩の不調もあり、大不振にあえいでいる。7月3日現在、8試合に登板し1勝5敗で防御率8.23。

「このままではチームの足手まといになる。(ローテーションに)いる資格はない」と自らもふがいなさを認めている。
 大不振の原因は何か。本人は認めようとしないがWBCの疲れがあるのは明らかだ。監督のテリー・フランコーナは「準備ができていないのに(3月に)急激に仕上げたのは確か。また一からやり直しで、(最短の)2週間で復帰できるようなDL入りではない」と語っている。元々、フランコーナは松坂のWBC出場に反対の立場だった。
 昨季、松坂は18勝をあげ、チームのプレイオフ進出に貢献した。しかしQS率は48.3%と低調だった。

 QSとは「クオリティ・スタート」の略。米国のスポーツライター、ジョン・ロウの発案によるもので、先発投手が6イニング以上を3自責点以内に抑えた場合に記録される。その数値を全先発数で割ったものがQS率だ。
 ちなみに昨季のアメリカン・リーグのQS率ベスト5は次のとおり。
 1位 クリフ・リー(インディアンス)74.2%
 2位 ザック・グレインキー(ロイヤルズ)71.9%
 3位 ジョー・サンダーズ(エンゼルス)71.0%
 4位 マーク・バーリー(ホワイトソックス)70.6%
 5位 ロイ・ハラディ(ブルージェイズ)69.7%
 松坂の48.3%はいかにも低い。要するに2回に1回の割合でゲームをつくり損なったことになる。これではエースの信頼は得られない。勝ち星ほどの評価を得られなかったのはそのためだ。

 WBCで総合コーチを務め、西武時代から松坂を知る伊東勤はこう語っていた。
「WBCでの松坂は(力が)落ちていました。その理由はいくつかあるんですが、まず太り過ぎですよ。体を使い切っていない。腰の回転も昔より鈍ったんじゃないでしょうか」
 さらに、伊東はフォーム上の欠陥を指摘した。
「最近は頭とリリースポイントの位置がかなり離れている。あれだけ離れると、ひじがしなってこない。ちょっと押し出すような感じになっているでしょう?」
 確かに松坂の現在の投げ方は昔でいうところの「アーム投げ」。腰の粘りもなければ、ひじのしなりもない。長年の“勤続疲労”も影響しているのかもしれない。体はゴツくなったが、しなやかさはすっかり影を潜めてしまった。
 松坂とレッドソックスとの間には、まだ3年も契約が残っている。球団はやきもきしているだろうが、ここで焦って無理をすると、より深刻な事態を招きかねない。松坂には休養も仕事のうちだと割り切ってほしい。

<この原稿は2009年7月19日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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