ライバルが躍進する姿を、ただ指をくわえて見ているわけにはいかない。レアルは名門再建に向けて、最強のカードを切った。
2000年からクラブ会長を務め、“銀河系軍団”を作りあげたフロレンティーノ・ペレス氏を3年ぶりにクラブ会長の座に復帰させたのだ。6月1日に復帰した剛腕は、再び“銀河系軍団”の結成に着手することを約束した。
 会長就任から2週間足らずで、カカに続き、ロナウドも獲得。どうやらペレス氏は復帰する前から、水面下で裏工作を行なっていたようだ。
 ペレス氏の“銀河系軍団”再結成への野望は留まることを知らない。カカ、C・ロナウドに続き、ダビド・ビジャ、シャビ・アロンソ(ともにスペイン)、フランク・リベリー(フランス)の獲得も視野に入れているようだ。特にリベリー争奪戦はライバルのバルセロナと現在の所属クラブ、バイエルン・ミュンヘンとの三つ巴の様相を呈しており、今後の展開に注目が集まる。

 ただし、こうしたやり方には既視感がある。銀河系軍団とよばれた第1次ペレス政権下のレアルは、02年に欧州CLを制覇したものの、03−04シーズンから3シーズン無冠に終わり、その王国は脆くも崩れ去った。ルイス・フィーゴ(ポルトガル)、ジダン、ロナウド(ブラジル)、デイビッド・ベッカム(イングランド)という当時のスターを買い漁ったが、費用対効果という面では成功を収めたとは言い難い。

 晩年の銀河系軍団は、選手の不仲説やロッカールームでの暴力沙汰などゴシップ記事ばかりを提供し、内部崩壊が自白の下にさらされた。
 06年に成績低迷の責任を取って退任したペレス氏は当時、力なくこう語った。
「私は選手を甘やかせてしまった。スター選手を何人もとったが、数人、勘違いしてしまったものがいる」

 彼自身はこの言葉を覚えているのだろうか? ペレス氏はスペイン最大手の建設会社ACS社の総帥という顔も併せ持つ。サッカーバブルと建設バブルの失敗から彼は何を学びとったのか? スーパースター軍団は確かにピッチの華だが、その副作用も小さくはない。
 歴史は繰り返すのか、それとも……?

(おわり)

<この原稿は「経済界」2009年7月21日号に掲載されました>
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