後期は5連勝もあって、順調な滑り出しだったものの、現状は14勝12敗1分の4位。8月中旬の香川、長崎との9試合を3勝6敗と負け越したのが響いています。特に長崎戦は今季3勝8敗1分と大きく負け越し。相手の強力打線に意識過剰になるあまり、自分たちの野球ができていないように感じます。長崎との直接対決はまだ4試合も残っていますから、苦手意識をなんとか払拭したいものです。
 エースとして期待していた渡邊隆洋の不調など、誤算続きだった投手陣は森辰夫がようやく本領を発揮してきました。前期はわずか4勝(3敗)だったのが、後期は早くも6勝(4敗)。打線の援護に恵まれず、負け投手になっている試合もありますが、先発として安定した内容をみせています。

 前回紹介したような「力がボールに伝わらない」と悩んでいた姿は、もうありません。サードからのスローイング練習やイニング間の投球練習を増やすことで、いい時の感覚を完全に取り戻しました。自分から「もっとこうしたい」と意見を出すようにもなりましたし、心身ともに充実していることがうかがえます。残り1カ月、森には先発、中継ぎとフル回転してもらうつもりです。

 ただ、ダブルヘッダーもある9月の過密日程を勝ち抜くには森、サイドスローの徳永雄哉に加え、最低でももう1枚、計算できる先発が必要になります。ここはサウスポー西村拓也の頑張りが不可欠です。開幕前は先発の柱として考えていた西村拓は肩痛があり、ここまで2勝(1敗)。しかし、このところはまずまずの投球ができています。

 課題は立ち上がりの悪さでしょう。先日の長崎戦でも、先頭打者に当たり損ねの内野安打を打たれたことで波に乗れず、死球にボークと大荒れの内容。初回に2点を失って負け投手になりました。確かに投手は誰しも最初のアウトを取るまでは不安なもの。しかも先発は何日も前から登板が決まっていますから、その緊張感はリリーフとはレベルが違います。

 僕は現役時代、立ち上がりを苦にしないタイプでしたが、コーチになって初回に苦しむ投手を何人も見てきました。対処法はブルペンでの投球数を増やすなどいろいろあります。とはいえブルペンとマウンドでは緊張感が全く違うのも事実。一番大切なのは、先頭打者を出しても引きずらないことだと思っています。西村にも、そういった切り替えの巧さを身につけてほしいものです。

 打線では4番の中村真崇が打率.355、本塁打7本と好成績を残しています。社会人から途中入団した昨季は実戦のブランクを取り戻すのに時間がかかりましたが、今季はキャンプからしっかりトレーニングを重ねました。ここまで主砲として持ち前の長打力を充分に発揮しています。今年から始めたサードの守備も、早出練習の成果で、ようやくさまになってきました。自分の両サイド2メートルの打球を確実に捕ってアウトにできれば、最低ラインはクリアと言えます。NPBのスカウトからみれば、打てるサードは魅力です。後は今以上に打率と長打を増やして、アピールしてほしいと思っています。

 絶対的な4番がいるだけに、重要なのは前後を打つクリーンアップです。昨季3割をマークした3番・荒川大輔は調子が上がってきたものの、問題は後を打つ5番打者。昨季首位打者の西村悟、意外なところで一発が出るトモ、陽3兄弟の次男・耀華らを日替わりで起用していますが、なかなか安定した成績を残せていません。3、4番が残したランナーを思うように返せないため、低い得点力に泣いています。

 先発の3番手と5番打者、ここが福岡が優勝を狙うための大きなポイントです。昨年の後期も8月終了時で首位ながら、最後の1カ月で4勝7敗。失速して愛媛に優勝をさらわれました。幸い、この後期は故障者続出だった前期と比べると、ほぼベストメンバーで試合ができています。一気に走る力はなくとも、最後までトップにくらいつく展開には持ち込めるでしょう。

 長崎に先を越されてしまいましたが、今度こそ九州、福岡に優勝トロフィーを持ち帰りたいと思っています。元ソフトバンクのセットアッパー山田秋親の入団も決まりました。ファンのみなさん、ラスト13試合の戦いを楽しみにしていてください。 
 

森山良二(もりやま・りょうじ)プロフィール>: 福岡レッドワーブラーズ監督
  1963年7月20日、福岡県北九州市出身。福岡大大濠高時代は甲子園の出場経験ももつ。北九州大を中退後、ONOフーズを経て87年、ドラフト1位で西武に入団。パームボールを武器に88年には10勝をあげて新人王を獲得した。同年の日本シリーズでは第4戦で中日相手に完封勝利を収めている。93年に横浜に移籍し、95年限りで現役を引退。以降、横浜、西武で投手コーチ、トレーニングコーチを歴任した。現役時代の通算成績は86試合、14勝15敗、防御率4.21。


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