後期は残り5試合で首位・高知と0.5差の2位。前期優勝を逃した反省を生かし、ここまでは各選手がしっかりプレーできています。特にエースの福田岳洋が8勝、右腕の高尾健太が10勝と、先発2本柱がゲームをつくっています。2人が大崩れしないところが、優勝争いできている大きな要因です。
 福田はケガで戦列を離れた時期もありましたが、ここにきてストレートのスピードが増してきました。変化球のコントロールが良くなり、カーブでストライクがとれるようになっています。これにより、以前にも増して緩急がつき、ピッチングの幅が広がりました。

 一方の高尾はシーズン前に覚えたカットボールを効果的に使えています。もともと彼はこれといった球種があるわけではなく、打者を打たせてとるタイプ。左打者相手にやや内に食い込むカットを習得したことで、うまく詰まらせる投球が可能になりました。

 彼は一時、野球を諦め、社会人として働きながら、軟式でプレーしていた選手です。リーグに入団して昨季、中継ぎで経験を積んだことで、打たせてとる自分のスタイルを発見したのではないでしょうか。走者が出ても落ちついたピッチングができています。

 以前も書きましたが、僕は現役時代にリリーフをしていた経験上、「走者が出てからのピッチング」を重視しています。もちろんヒットや四球がないに越したことはありません。しかし、いつも完璧に相手を抑えることは不可能です。そうであれば、たとえ走者を出したとしても、いかにゼロで抑えるかを考えたほうがいいでしょう。

 ピッチャーは得点圏に走者を背負うと、打たれたくないとの感情が働いて自然と力みが出てきます。走者がいない時には、いい投球ができていたのに、ピンチになると乱れてしまう。プロで活躍できない投手の典型的なパターンです。勝てる投手は力む場面でも平常心で投げられます。そのため苦しい場面でベストピッチができるのです。高尾がこの領域に達したとは、まだ言えませんが、さらに経験を積んでレベルアップしてほしいと思っています。

 福田も高尾も今の安定感に磨きがかかれば、当然ドラフト候補にあがってきます。いや、香川の主力投手として、ぜひドラフト候補と呼ばれる存在になってほしいものです。特に福田は26歳と年齢は高めですが、絶対に諦めてはいけません。僕もそうですが、通常の選手は20代後半から30代前半の時期がもっとも力が出るものです。まだまだ彼には伸びしろがあります。もう26歳ではなく、まだ26歳なのです。課題はありますが、今の方向性をさらに伸ばすことがNPBへつながります。練習を見ていてもチームの軸としての自覚が出てきました。残りシーズンも大いに期待しています。

 残りは泣いても笑っても金曜日からの5連戦のみとなりました。優勝に向けて、ここからは一戦必勝です。全員、死にもの狂いで投げてもらうことになるでしょう。むしろ、「オレが毎日でも投げて優勝を決めてやる」と意気込むほどでなければ、この世界では生きていけません。すべてのピッチャーが全試合で投げるつもりで準備をしてほしいですし、マウンドに上がれば悔いを残さず投げてほしいと感じています。

 気づけばあっという間のシーズンでした。指導者として僕自身も大変勉強になった1年間、でも、ここで終わるつもりはありません。リーグチャンピオンシップ、独立リーググランドチャンピオンシップと、さらに10試合、戦うつもりです! ファンのみなさん、最後の最後まで熱い応援、よろしくお願いします。


岡本克道(おかもと・かつのり)プロフィール>: 香川オリーブガイナーズコーチ
 1973年6月9日、大阪市出身。柳ヶ浦高時代は甲子園に2度出場。東芝を経て97年、ドラフト5位で福岡ダイエー(現ソフトバンク)に入団。直球を武器に1年目から52試合に登板し、19セーブをあげる。2年目も21セーブをマークし、リリーフエースとして活躍した。03年には阪神との日本シリーズで5試合に登板して無失点。日本一に大きく貢献した。06年オフに戦力外通告を受け、その後引退。08年より長崎のコーチにとなり(途中で解任)、今季より香川のコーチに就任。現役時代の通算成績は291試合、17勝16敗51セーブ、防御率2.98。


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