1ラウンドでファッシオの動きをあらかた把握した長谷川は2ラウンドに入り、じわじわと間合いを詰め始める。

 そして1分25秒過ぎ、至近距離からの左ストレートがウルグアイ人の顔面を打ち抜いた。もんどり打って倒れるチャレンジャー。カウント8で立ち上がったものの、もう反撃するだけの余力は残っていなかった。

 かろうじて立ちあがったウルグアイ人に、最後は連打の雨を降らせた長谷川は2分18秒、TKO勝ちを収めた。

 勝負を決めた左ストレートは偶然に出たものではない。過日、長谷川は私にこう明かした。

「1ラウンドでファッシオのクセは大体わかりました。僕が前に出て距離が詰まると、彼は必ず右ストレートを打ってくるんです。
 それで2ラウンドに入り、あえてその距離に僕は立った。案の定、ファッシオは右ストレートを打ってきた。それをよけて左を打った。あとは見ての通りです」

 ボクサーにとって最も大切な才能はスピードでもパワーでもない。それは距離感である。神の距離感を持つ男――それが長谷川穂積である。


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