ボクシングのWBC世界バンタム級王者・長谷川穂積は日本人チャンピオンとしては歴代でも五指に入る名王者である。

 日本ボクシング史上2位の連続防衛記録(9回)もスゴイが、その中身はもっとスゴイ。ここ4試合はすべて2ラウンド以内にチャレンジャーを片づけている。

 長谷川の試合は、あっという間に終わってしまうから目が離せない。文字通り、瞬きすら許されないのだ。

 長谷川が倒すコツを体得したのは、この試合からではないか。2008年6月12日、長谷川はウルグアイのクリスチャン・ファッシオを6度目の防衛の相手に迎えた。ファッシオの戦績は17戦15勝(10KO)2敗。「ウルグアイの強打者」というふれこみだった。

 1ラウンドのゴングが鳴った。サウスポーの長谷川に対し、ファッシオはオーソドックスな右構え。右のガードを高い位置で保っているのは、長谷川の左の強打を警戒しているからだろう。

 しかし、強固に見えたウルグアイ人の防御は一瞬にして突破される。警戒していたチャンピオンの左ストレートによって……。

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