群馬ダイヤモンドペガサスは今シーズン、リーグチャンピオンシップで石川ミリオンスターズを3勝1敗で下し、球団創設2年目にして初優勝を達成することができました。そして現在は、四国・九州アイランドリーグのチャンピオン・高知ファイティングドッグスと独立リーグチャンピオンの座をかけてグランドチャンピオンシップを戦っています。
 正直、初対戦となった高知の情報は皆無に等しく、細かく戦略を練るにはいたりませんでした。ですから、とにかく普段の野球をすることが最優先。ピッチャーが粘って最少失点に抑えて守り抜く。そのためにはもちろん四球を出さないことが絶対条件でした。

 実際、試合をしてみると、高知は投打のバランスがいいチームでした。打線はつながりますし、足の速い選手も多い。投手陣は完投する体力があり、どんどん攻めのピッチングをしてきます。第1戦に先発した吉川岳投手はそれほどスピードはないのですが、ストライクを取るコントロールがあり、特に右打者にはフォークやチェンジアップといった落ちるボールを有効に使ってきていました。左打者へのスライダーもよかった。そのため、群馬の打者は変化球を意識しすぎて、ストレートにも詰まらされてしまったケースが多々ありました。

 第2戦に先発した伊代野貴照投手は、いわゆるパワーピッチャー。速いストレートでグイグイと押してくるタイプです。そんな伊代野投手との力勝負にことごとく負けてしまった群馬の打者は、振りぬくことさえもできませんでした。

 本来、群馬の攻撃はたとえヒットでつながらなかったり、ランナーを送れなくても足で相手投手にプレッシャーを与えながら進塁することができます。それが打者との相乗効果となって得点に結びついてきたのです。ところが、第1、2戦ではそうした群馬らしさを出すことができず、逆にこれまで自分たちがリーグでやってきたことを相手にやられてしまった感が否めません。さらに高知打線は逆方向へのつなぎのバッティングにも長け、選球眼もいい。ビジターだというのに、ホームの群馬よりも思いっきりプレーしていたように思えました。

 一方、投手陣はというと、試合をつくる上での絶対条件であるはずの四球を2試合で18個も出してしまいました。打たれても野手が守りでカバーすることはできますが、四球は野手には防ぎようがありません。ですから、四球だけはやめよう、と言っていたのですが……。それほど投手陣は、高知打線からのプレッシャーを感じていたのかもしれません。きわどいコースは見逃され、ストライクを取りに行けば打たれる。こうした悪循環が生まれ、完全にリズムが狂わされていました。目に見えないものから流れがつくられるのが野球ですが、そういう意味では群馬は心理戦で負けていたのだと思います。

 高知打線で特に警戒をしていたのが1番・YAMASHINと4番・カラバイヨでした。山伸は俊足ですから塁に出せば足でかき回してきますし、強打者のカラバイヨの前にランナーをためたくないという点からもなんとか抑えたいと思っていました。もちろん、四球で簡単に出すなんてことは、もってのほかでした。逆にカラバイヨには四球を出してもいいから、タイムリーを打たれないこと。あとは5番以降をどう抑えるかが勝負のポイントになるかなと思っていたのですが、まさに予想通りのやられ方をされてしまいましたね。

 特に第2戦、1−1で迎えた最終回は先頭打者への四球から始まり、YAMASHINのヒットとスチールでランナーがたまったところで、最後に試合を決めたのはカラバイヨの2点タイムリーとなる二塁打だったのです。

 31日からの第3戦以降は敵地に乗り込んでの戦いです。一つも落とせない、まさに崖っぷちの状態ですが、2試合の敗戦から得たものをいかせば十分に勝機はあるはずです。もうここまできたらジタバタしても仕方ありません。選手もいい意味で開き直り、思い切りの良さを出してほしい。BCリーグの代表という意識をもって、可能性がある限り死力を尽くして頂点を目指したいと思っています。                                                       

秦真司(はた・しんじ)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサス監督
1962年7月29日、徳島県出身。鳴門高校3年時には春夏連続で甲子園に出場。法政大学時代の84年、ロサンゼルスオリンピックに野球日本代表として出場し、公開競技ながら金メダル獲得に貢献した。翌年ドラフト2位でヤクルトに入団し、4年目には正捕手として122試合に出場した。その後、外野手に転向し、90年代のヤクルト黄金時代を築き上げる。99年に日本ハム、2000年に千葉ロッテへ移籍し、その年限りで現役を引退した。その後はロッテの打撃コーチや中日の捕手コーチ、解説者として活躍。昨季より群馬ダイヤモンドペガサスの初代監督に就任した。

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