MLB2009シーズンのラストを締めくくるワールドシリーズが29日からスタートする。ナショナルリーグを制したのは2年連続の世界一を目指すフィラデルフィア・フィリーズ。アメリカンリーグを制したのは、9年ぶりの王座奪還を狙うニューヨーク・ヤンキース。東海岸の強豪同士による対決は1950年以来で、その際は4勝0敗でヤンキースが圧勝した。59年ぶりのカードとなる頂上決戦の行方を占いたい。
 両チームの売りはなんといっても強力打線。レギュラーシーズンではヤンキースが244本、フィリーズが224本の本塁打を放ち、いずれもリーグトップだった。ポストシーズンでも、両チームは9試合で14本塁打をマークし、破壊力は抜群だ。

 そろって好調な打線を引っ張るのが、チームの顔である4番打者だ。ヤンキースはアレックス・ロドリゲス、フィリーズはライアン・ハワードが、このポストシーズンゲームでは主砲として素晴らしい活躍をみせている。A・ロッドは9試合で打率.438、5本塁打、12打点。ディビジョン・シリーズでは第2戦の最終回に同点2ランを放ち、リーグチャンピオンシップ第2戦でも延長11回に勝ち越された直後、起死回生の同点弾を叩きこんだ。過去のプレーオフでは勝負弱さを露呈し、ニューヨーカーの批判を浴びただけに、この爆発ぶりはワールドシリーズでも期待がもてる。ロドリゲスの後を打ってきた松井秀喜はDH制のない第3〜5戦はスタメンを外れる見通しだ。

 一方、ハワードは打率.355、2本塁打、14打点。リーグチャンピオンシップ第3戦での先制打、第4戦での先制2ランなど、ディビジョンシリーズ第1戦から8試合連続で打点をあげた。5番のジェイソン・ワースもリーグ優勝を決めたチャンピオンシップ第5戦で2本のアーチを描き、計5本塁打と当たっている。2番を打つシェイン・ビクトリーノもポストシーズンの打率は.361と調子がいい。切れ目のない攻撃陣はチャンピオンシップでは2戦、4戦と2ケタ得点をあげた。ここまで書けば、今年のワールドシリーズは両チームによる激しい打ち合いを予想したくなる。

 だが、両チームの投手陣もレベルは高い。ヤンキースはディビジョンシリーズ、リーグチャンピオンシップと第1戦のスターターとして白星スタートに貢献したCC.サバシアを筆頭に、A.J.バーネット、アンディ・ペティットの先発3人衆が安定している。ワールドシリーズでも、この順番でローテーションを回すのは確実だ。リードして終盤までバトンをつなげば、守護神のマリアーノ・リベラが控える。

 フィリーズはシーズン途中に獲得したクリフ・リーがポストシーズン3試合に先発して、2勝0敗、防御率0.74と完璧な内容。エース左腕のコール・ハメルズはレギュラーシーズン同様、崩れるケースが目立つが、同じく途中補強したベテランのペドロ・マルチネスがリーグチャンピオンシップで好投をみせ、先発をこなせる人材は豊富だ。リードを奪えば、守護神のブラッド・リッジがいる。レギュラーシーズンでは0勝8敗31セーブ、防御率7.21と安定感を欠いたものの、ポストシーズンでは5試合に登板して、無失点ピッチングを続けている。

 第1戦はサバシアvs.リーによる両左腕の激突が決まった。強力打線を擁する両チームではあるが、まずは1点を争うゲーム展開になるだろう。両軍とも共通した弱点はリリーフ陣にある。先発が早々と崩れた場合はワンサイドゲームになる可能性が高い。フィリーズはレギュラーシーズンでは先発だったJ.A.ハップ、ジョー・ブラントンを中継ぎに回す予定で、ヤンキースもジョバ・チェンバレンをブルペンに入れる。急造リリーフの出来と、ベンチの継投策がシリーズの行方を左右しそうだ。