「20年にひとりの逸材」と言われる高校球界ナンバーワン左腕・菊池雄星(岩手。花巻東)の交渉権を獲得したのは埼玉西武だった。
 それにしても西武はドラフトに強い。

 24年前のドラフトの目玉は清原和博(PL学園)だった。周知のように清原は巨人入りを熱望していたが、6球団の競合の末、見事に当たりクジを引き当てたのは西武だった。
 清原は1年目からレギュラーに定着し、打率3割4厘、31本塁打、78打点で新人王に輝いた。
 高卒選手が1年目に30本以上のホームランをマークしたのは清原以外に未だ一人もいない。

 11年前のドラフトの一番人気は松坂大輔(横浜)だった。松坂は在京セ・リーグの球団を希望していた。
 ところが3球団が競合し、当たりクジを引いたのはパ・リーグの西武。一時は社会人入りも伝えられたが、徐々に軟化し、1年目からローテーションの柱として活躍した。
 25試合に登板し、16勝5敗、防御率2.60。最多勝と新人王に輝いた。

 このように西武はクジ運が強いだけでなく、大物ルーキーを育てるのも巧い。野球にじっくり取り組むには、いい球団じゃないか。
 報道によると入寮する「若獅子寮」では、かつて清原や松坂が住んだ“出世部屋”があてがわれる予定とか。あそこならネオンの誘惑もないから野球に打ち込めるだろう。

 さて1年目から菊池は活躍できるか。私は勝っても1ケタではないかと思っている。
 プロに入った時点の松坂の完成度が10とするなら菊池は6か7くらい。本人も告白しているように「変化球も投げられない」ピッチャーなのだ。
 まずは下半身を鍛え、しっかりとした土台をつくることだ。フォームが安定すれば、黙っていても15は勝てる。4年後のWBC日本代表のエースを目指せばいい。

<この原稿は2009年11月23日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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