3年目を迎えたBCリーグも無事にシーズンを終えることができました。どの球団も昨秋の「リーマン・ショック」の影響を大きく受けてスポンサー収入が大幅に減少し、経営面では非常に苦労しました。昨年より1試合平均500人増を目指していた観客動員数も逆にマイナスとなり、本当に厳しいシーズンだったと思います。それでもしっかりとしたかたちで3年目のシーズンを終えることができました。これもひとえに各地域の皆さんの支えあってのことと、深く感謝申し上げたいと思います。
 とはいえ、来シーズンへの課題は山積みです。まずは初めて前年度を下回った観客動員数ですが、球団別に見ると前年度を上回ったのは新潟アルビレックスBCと石川ミリオンスターズのみ。それも新潟に関して言えば、今夏オープンした新球場「HARD OFF ECOスタジアム新潟」効果であることは明らかです。試合自体を目当てにどれだけ集客できるかは、来シーズン以降が勝負どころといえるでしょう。

 そのほかの4球団は前年度を下回ったわけですが、原因はさまざまです。休日に予定されていたメイン球場での試合の半数以上が雨で中止となり、平日のナイターになってしまったことが影響した球団もあれば、昨シーズンまで行なっていた無料招待券の配布を中止した球団、そして、成績不振でファンが離れてしまった球団もありました。しかし理由は何であれ、リーグとしてファンを拡大することができなかったことは事実。来シーズンは新たな取り組みをしていかなければなりません。

 昨シーズンの反省を踏まえて今シーズン、リーグが目指したのは「野球事業を通じての地域貢献の徹底」でした。そこでリーグのアイデンティティとして「BCリーグ憲章」の制定、さらには「地域貢献プロジェクト」を立ち上げ、各球団による地域活動についての詳細を公にすることで理解を深めることに務めてきました。

 シーズンを終えた今、自分たちがやっていること、やろうとしていることは決して間違ってはいないということを確信することができています。残念ながら観客動員数としての数字にはあらわれていませんが、地域の人の心をつかむことで、固定客の輪が広がりつつあるということを実感することができているからです。

 それでも観客動員数を増やすことができず、逆にマイナスにしてしまったわけですが、その最大の要因は試合時間の長さにあると考えています。昨年まで1試合平均時間は3時間を切っていました。ところが、今年は3時間4分と長くなってしまったのです。

 NPBが3時間8分ということを考えても、やはり3時間4分は長過ぎます。同じ3時間でもNPBとBCリーグとでは、感じる長さはだいぶ違うことでしょう。NPBには時間を感じさせないだけの爆発力やエネルギーがあります。ピッチャーの球の勢いにしろ、バッターの打球のパワフルさにしろ、BCリーグとは比べ物になりません。マウンドやバッターボックスまでゆっくり歩いていても、その姿さえもファンが楽しんでしまうようなものを見せてくれるのがNPBなのです。しかし、BCリーグはそこまでのレベルにはいたっていません。にもかかわらず、時間だけはNPBと同じでは、ダラダラとした感じを受けてしまっても仕方のないことです。

 また、観客動員数が最も伸び悩んでいるのが、平日のナイターということを考えても試合時間の短縮は不可欠です。休日に比べれば、観客が入りにくい条件に加え、試合が3時間以上となれば、観客が遠ざかるのも無理はありません。子どもたちを連れて行きたいという親がいても、21時を過ぎても終わらないような試合では、なかなか行こうとは思えないからです。いくら憲章で「子どもたちのために」と謳っていても、これでは本末転倒です。

 そこで来シーズンは1試合平均時間を今シーズンより34分減らすということを目標にしたいと思っています。つまり、2時間半にするということです。18時から始まる平日のナイターも20時半には終了し、子どもたちを21時には自宅に帰そうというのが狙いです。

 もちろん、達成するのは容易ではありません。そのためには大きな犠牲を払う部分も出てくることでしょう。しかし、何事も徹底的にやろうとしなければできないと私は思っています。メインとなるのは、やはり攻守交替の際の全力疾走。これは高校野球くらいまでのものを目指そうと思っています。

 そのほか、イニングまのイベントの短縮、監督からのブロックサインやキャッチャーからのフォーメーションに対するサインの短縮、バッターボックスを外す回数の減少、そして審判に対してはもっと試合を円滑に進めるためのトレーニングをする必要があると思っています。現場の選手や監督、フロント、審判という3つの柱それぞれでレベルを高くしていくことで、34分という高いハードルをクリアしていこうと思っています。

 さて、経営についてですが、先述したように不況のあおりを受けた今シーズンは、どの球団も大変厳しい状況となりました。昨年度は石川と信濃が黒字化の見通しが立つところまで改善されましたが、今年度は厳しい結果となりそうです。それでも昨年度1億3700万円だった7法人あわせた損失は、今年度は1億円を切ることが見込まれています。

 さらに7月に経営体制が一変した福井ミラクルエレファンツも、経営の中心となった福井新聞社や福井県の経済界の方々の協力によって一時期の危機を脱し、現在では安定軌道に乗りつつあります。来年度も厳しいことにはかわりはないと思いますが、7法人ともに一層の努力をして黒字化モデルの基盤を構築していきたいと思っています。

 来シーズンは4チームが新監督のもとで始動し、各球団ともに選手も激しく入れ替わります。ここ2年は群馬ダイヤモンドペガサス、石川、富山サンダーバーズの3球団の強さが目立っていましたが、来シーズンもそうとは限らないでしょう。私としては、6球団の戦力が均衡し、手に汗握るような好ゲームが多く誕生することを祈っています。来シーズンも応援、よろしくお願いいたします!


村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。
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