演説会場で「妾(めかけ)が3人もいて偉そうなことを言うな」とヤジられたのは“保守合同”の立役者、三木武吉である。
 しかし、このくらいでひるむような三木ではない。「失礼なことを言うな。3人ではなく5人だ。私は最後まで面倒を見るつもりだ。何も恥じることはない」。毅然とした態度でこう言い返したという。

 ゴルフ界きってのスーパースター、タイガー・ウッズが窮地に立たされている。出るわ、出るわ。現時点で「鉄人28号」ならぬ「愛人14号」だ。ゴルフのホール数にちなんで「18号」あたりまではいきそうな勢いだ。
 一連の下半身スキャンダルに深く傷ついたエリン夫人は離婚を決意したという情報もあり、タイガーはPGAツアーを含むゴルフ大会への出場を当分の間、自粛すると自身のホームページで公表した。

 夫人の離反以上にタイガーを悩ませているのは相次ぐスポンサーの契約解除だ。2007年、タイガーには約130億円の収入があった。内訳は約30億円がツアー賞金で、残りの約100億円が広告スポンサー収入。タイガーのスター性と人格に商品価値を見出したからこそ、世界的な企業が彼の支援に乗り出したのである。
 そこへ降って湧いたような下半身スキャンダルだ。米衛星用品大手のジレットがツアー自粛期間中の支援凍結を打ち出したのに続き、米コンサルティング大手のアクセンチュアは契約解除を発表した。理由はこうだ。
「ここ2週間の状況を見ると、もはや正しい“企業の顔”ではない」

 ここぞとばかりに世間からバッシングの集中砲火を浴びているタイガーだが別に法を犯したわけではない。この際、三木武吉にならって「何も恥じることはない。私のゴルフにウソはない」とでも言ってみたらどうか。マラドーナしかり、A・ロッドしかり、スキャンダルさえも養分に変えるのが真のスーパースターである。

<この原稿は「週刊ダイヤモンド」2010年1月9日号に掲載されました>
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