いよいよ4年に1度の世界最大の祭典が近づいてきた。日本代表はこのところやや精彩を欠いているが、今が“底”だと考えたい。しかし、何か手を打たなければV字回復はありえない。手っ取り早いのは救世主を探すことだ。岡田ジャパンの救世主――その選手は国内にいた。

 歯車の噛み合わない岡田ジャパン

 2010年の日本代表の戦いぶりを振り返ってみよう。今年初戦、敵地でのバーレーン戦は若手中心のメンバーで試合に臨んだ。ここでは日本代表の救世主になりうる才能が大きなアピールをする。平山相太が途中出場ながらハットトリックを達成した。決定力不足が叫ばれて久しい日本にとって、平山の出現は久々の明るいニュースだった。

 しかし、いい流れも長くは続かなかった。2月2日に大分で行なわれたベネズエラとの親善試合は、レギュラークラスの国内組で試合を行なったものの、いいところなくスコアレスドロー。大きな期待を集め、途中出場した平山もゴールへ向かう動きが少なく、チャンスらしいチャンスを演出することはできなかった。

 さらに、2月6日から14日にかけて東京で行なわれた東アジア選手権は、岡田ジャパンにとってこれまでにない厳しい大会となった。初戦の中国戦では決定的なシーンもなくスコアレスドロー。第2戦の香港戦は完全に格下の相手ということもあり、3対0で勝利。しかし、この試合の内容も手離しで喜べるようなものではなかった。

 サポーターのフラストレーションが一気に爆発したのは、最終戦の韓国戦だ。前半23分に遠藤保仁のPKで先制したものの、39分にPKを献上しすぐさま同点とされる。そして前半39分にはミドルシュートを叩き込まれ、さらに後半25分にDFラインの裏へスルーパスを通されあっさりと3失点。ライバル相手に1対3とホームで完膚なきまで叩きのめされ、国立競技場を埋めた大観衆から大きなブーイングを浴びた。「ホームで勝てなかったことは申し訳ない。ただ、チームは徐々によくなっている」。岡田監督は試合後、そう答えるのが精一杯だった。

 “2軍”にも惨敗 代表チームに未来はあるのか!?

 つづく3月3日、ホームでのアジアカップ予選バーレーン戦こそ2対0で勝利したものの、海外組の本田圭佑(CSKAモスクワ)や長谷部誠(ヴォルフスブルク)らを招集しながら2ゴールのみという内容は物足りなさを払拭できず、岡田監督の信頼を取り戻す結果とはならなかった。

 そして、4月7日のセルビア戦を迎える。セルビアはW杯欧州最終予選でフランスを抑えグループ首位で本大会行きの切符を掴んだ強豪である。しかし、主力全員が海外リーグでプレーしており、国際Aマッチデーではないこの日に来日することはなく、相手はセルビア国内リーグでプレーする選手のみで構成された“2軍チーム”だった。しかし、その2軍を相手にして、日本は0対3の惨敗。岡田監督が試合後のテレビインタビューを拒否するほど大きなショックを受ける敗戦となった。

 たしかにセルビアに海外組がいなかったように、日本にも海外でプレーする選手たちがいなかった。しかし、日本の陣容はほとんどがJリーグで活躍する選手たちなのだ。現在、海外でプレーする選手でレギュラークラスとされているのは本田と長谷部くらいだろう。近年、不甲斐ない試合が行われると判を押すように使われてきた「海外組不在」という合言葉は、今の岡田ジャパンに通用しない。国内組での敗戦は、もはや言い訳のきかないものなのだ。

 4大会連続を目指す男のJリーグ復帰

 代表の迷走ぶりからは目を背けたくなるような状況でも、日本サッカー全体が暗いムードに覆われているかといえば、そうではない。毎週末開催されているJリーグは例年と変わらない、いやそれ以上の熱戦が各地で繰り広げられている。今季のJ1はスタートから大混戦で、天皇杯王者・ガンバ大阪の大きな出遅れがあったり、7年ぶりにJ1の舞台に復帰したベガルタ仙台の健闘があったりと話題に事欠かない。開幕直前に海外から中村俊輔(横浜FM)や稲本潤一(川崎F)など大物日本人選手が復帰しており、全国各地のスタジアムには多くのサポーターが足を運んでいる。

 中でも、現在Jリーグで最も輝きを放っている男といえば、2位・清水エスパルスを牽引する小野伸二だ。3年ぶりのJ復帰となった今季、故郷の清水に戻った小野はこれまで全7試合に出場し、自身の得点こそまだないものの、リーグトップの13得点をあげている攻撃陣をひっぱっている。

 小野といえば、浦和レッズでのルーキーイヤーとなる1998年に、W杯初出場だった日本代表に大会直前に招集され、第3戦のジャマイカ戦ではピッチに立っている。これまで98年フランス、02年日韓、06年ドイツと3大会連続で出場を果たしているだけでなく、01年からオランダ・フェイエノールトへ移籍しUEFAカップ制覇にも貢献した。日本人の中でも最も世界のサッカーを肌で感じている選手の一人といえよう。

 日韓W杯直前の02年にレッズへ復帰したものの大会後は再び欧州へ渡り、ドイツ・ブンデスリーガのボーフムへ。ドイツではケガも多く、全てのシーズンで活躍してきたわけではない。ただ、09−10シーズンでは先発の座を獲得しながら、清水移籍の道を選んだ。「W杯について強いこだわりはない。清水で活躍することがすべて」とシーズン開幕前に語った小野だが、ドイツでも開幕当初から試合に出場し、悪くない滑り出しを見せていただけに、清水復帰の理由の一つにW杯の存在もあるだろう。12年前にサプライズ招集を行なった張本人は岡田現日本監督でもある。沈滞ムードの代表にとって、小野のプレーは一筋の光明となるかもしれない。

 小野がW杯メンバーに選ばれる可能性は非常に低い。しかしそれでも、小野のプレーが健在であることはたしかだ。フランス大会でピッチの上を躍動した18歳は、円熟期を迎えた30歳となっても輝きを失っていない。日本代表のサッカーに期待できないサポーターも、小野のプレーは必見である。「小野のプレーだけでも見たい」「小野のサッカーは面白い」。そのような声が大きくなれば、岡田監督が小野を呼び戻す可能性もゼロではなくなる。日本代表の救世主を最も欲している人は、岡田監督に他ならない。球と戯れるようにゲームを楽しむ小野のプレーには、現在の日本代表に欠如している“遊び心”が凝縮されているように思えてならない。

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。

<スカパー!でW杯の3D放送を実施>

 スカパー!では、このほどFIFAのオフィシャルパートナーであるソニーと協力し、W杯南アフリカ大会の3D放送を実施すると発表した。6月19日よりスカパー!HDおよびスカパー!光に3D専門チャンネルを開局し、同日行われる日本−オランダ戦を生中継する。また6月20日以降、7月11日の決勝戦を含む計25試合を3D放送する予定だ。
(写真:3D専用メガネをかけて放送をPRするスカパー・田中専務(左)とソニー・島津部門長)

 鋭いシュートが目の前に飛び出し、鮮やかなスルーパスが立体的にDFの間をすり抜ける。3D専用メガネをかけて視聴した映像はまさに迫力満点だ。ゴール裏やピッチサイドなど、7カ所に設置されたカメラを使って作りだされる3次元の世界は、リビングにいながらにして現地の特等席に私たちを誘い出す。

 今回の3D映像はソニーがFIFAと共同で制作するもので、現時点では日本の他、アメリカ、韓国、スペインで放送が決まっている。スカパー!での放送は、ソニーの<ブラビア>など3D対応テレビで視聴が可能だ。チャンネルまたはパック・セットの契約を結んでいれば、無料で臨場感あふれるサッカー放送が楽しめる。

 スカパー!では既に今回の南アフリカ大会全64試合のハイビジョン中継が決定済。こちらもチャンネルまたはパック、セットの契約をしていれば、誰でも無料で視聴できる。オフィシャルコメンテーターには前日本代表イビチャ・オシム氏を招き、名古屋のドラガン・ストイコビッチ監督、鹿島のオズワルド・オリベイラ監督など、世界と日本をよく知るJリーグの指揮官もゲストとして登場予定だ。スカパーJSAT株式会社の田中晃専務は「2D(2次元のハイビジョン放送)ではオシムさんの解説とともに、3Dでは全く新しい世界を体験していただきたい」と語っている。

 3D専門チャンネルの解説は日本ではもちろん初めて。3Dテレビの普及にはまだまだ時間がかかることが予想され、当面は多チャンネルのスカパー!ならではのサービスとなりそうだ。田中専務は「今後はJリーグや格闘技、プロ野球、競馬などのスポーツはもちろん、音楽ライブや映画、アニメでも3Dのコンテンツを提供したい」としており、スカパー!での楽しみ方はさらに広がっていくはずだ。

アウェイはスカパー!で行こう。
J1リーグ戦全試合生中継、J2リーグ戦全試合放送






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