新潟アルビレックスBCは現在、2勝4敗1分という成績です。もちろん、数字だけを見れば到底納得できるものではありません。大差での敗戦は一つもないのですが、少し歯車がかみ合っていないようです。つまり投打のバランスが合っていない。投手が最少失点で抑えても、打線がチャンスをモノにできなかったり、逆にピッチャーが四球で崩れてしまったり……とチグハグな野球になっています。今後、この課題をどう修正していくかがカギとなってくると思います。
 昨シーズン、新潟は前期後期ともに群馬ダイヤモンドペガサスに首位の座を奪われました。勝ち星を増やすことができなかった要因としては、勝てるはずの試合を自分たちのミスで逃してしまったことにあります。今シーズンはそれをなくそうというのが目標ですが、開幕戦の富山サンダーバーズ戦、いきなりやってしまいました。初回は無死から2者連続で四球を出し、ヒットとホームランでいきなり4点を奪われてしまったのです。打線も1点ビハインドの8回には無死一塁の場面で送りバントがダブルプレーとなり、せっかくの得点チャンスをつぶしてしまいました。そこで同点としていれば、違う展開が待っていたかもしれません。

 開幕黒星スタートを喫した新潟は、そこから今度は打線が“タイムリー欠乏症”に見舞われ、なかなか勝ち星に恵まれませんでした。しかし、5戦目にしてようやく群馬ダイヤモンドペガサスに5−0と完封勝ちし、初勝利を得ました。次の24日の信濃グランセローズ戦も同じく5−0で完封勝ち。今季初の連勝を果たし、これで波に乗れるかと思った矢先、25日の信濃戦、1−1で迎えた6回、またも無死から2者連続四球。結局、犠牲フライで1点を失い、これが決勝点となったのです。

 しかも信濃が5安打に対して、新潟は9安打。野球はヒットを打つことが目的ではないということが如実にあらわれた試合でした。極論を言えば、理想はノーヒットで得点をすること。相手ピッチャーにとってはこれ以上イヤなことはないからです。今シーズンの目標の一つである足をからめた攻撃ができれば、新潟も自ずとそうした試合ができるはずです。

 しかし、序盤に4点も5点も奪われては、走らせたくてもなかなか大胆なサインを出すことはできません。逆に競ってさえいおれば、相手にプレッシャーをかける意味でも走らせやすい。そうすれば、たとえノーヒットでも得点のチャンスはつくれるのです。

 さて、新潟があげた2勝はどちらも石渡大輔(岩倉高−城西国際大−伯和ビクトリーズ)が先発し、完封勝ちを収めたものです。石渡は2試合とも無四球と、コントロール抜群。ピッチングのリズムもよく、バックも非常に守りやすいことでしょう。また、彼は社会人出身だけあって、勝利への執念が誰よりも強い。先日の試合でもキャッチャーフライが上がった際、一目散にマウンドから駆け下りてきて、必死になってカバーに入っていました。年齢的にも最年長ということで、これからもどんどんピッチャー陣を引っ張っていてほしいと思います。

 今シーズンのチームスローガンは「一瞬懸命」。どんな時も元気よく、ハツラツとしてプレーをファンの皆さんにお見せしたいと思っています。実際、選手たちはみんな一生懸命ですので、地元の方たちにはぜひ球場で選手のプレーを見てもらいたいと思います。ただ、正直を言えば、まだチームが波に乗りきれていないこともあり、時には沈みがちになることもあります。しかし、そんな時はぜひスタンドから「元気を出せ!」と発破をかけてほしいと思います。



芦沢真矢(あしざわ・しんや)プロフィール>:新潟アルビレックスBC監督
1958年1月1日、山梨県出身。巨摩高校時代は4番・捕手として初の甲子園に出場。76年、ドラフト5位でヤクルトに入団し、貴重な控え捕手として活躍。88年に現役引退後はヤクルトでブルペン捕手、広島でコーチを務めた。2005年、四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズ初代監督に就任し、2年目の06年には優勝に導く。昨年は北信越BCリーグの石川ミリオンスターズで運営を部長を務め、08年より新潟の監督に就任。今季、3年目を迎えた。


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