香川はここまで11勝3敗2分。貯金を稼いでいますが、決してチーム状態はよくありません。接戦をなんとかモノにしている試合が多く、あと1本出ていれば、どうなっていたかわからないゲームがたくさんありました。それでも何とか勝てているのは抑えの6年目・橋本亮馬の安定が大きいでしょう。ここまで8試合に投げて7セーブ。無失点ピッチングを継続しています。最後がしっかりしていることで継投は計算しやすくなっています。
 現状、先発は元オリックスでリーグトップの5勝をあげている前川勝彦、3勝の高尾健太宇高直志(元紀州レンジャーズ)の3投手でローテーションをまわしてきました。しかし、今週は巨人との交流戦を含め、来週の月曜日まで5試合が組まれています。今後、雨天中止等で日程が過密になってくる可能性もあり、4枚目の先発は必要不可欠です。

 その一番手として期待しているのが2年目の上野啓輔です。早速、19日の長崎戦(佐世保)で先発します。彼は190センチを超える長身から投げ下ろす速球が武器。NPBのスカウトも注目している存在です。しかし、春のキャンプでピッチングを見た時には、球速は130キロも出ない状態でした。しかもコントロールに難がある。これでは試合で使うことができません。

 そこで彼とはフォームの矯正に取り組みました。具体的に修正したのは左手のグラブの使い方です。それまでの上野のフォームはグラブがボールを離す前に後ろに行っていました。それは前の肩の開きが、早いことを意味します。肩が早く開くと制球は安定しません。ですから、グラブを体の中にしっかり入れ、体の開きを我慢するように改善していきました。

 徐々に新フォームにも慣れ、このところはストレートのスピードも戻ってきています。16日の愛媛戦では1イニングを投げて3者凡退。常時、140キロを超える速球を投げていました。あとは先発で投げた時にどのくらいの内容を見せてくれるか。NPBへの可能性を広げるためにも、先発もできるところをぜひアピールしてほしいと考えています。

 上野に限らず、これから夏場を控えて若い選手たちの台頭は欠かせません。下からの突き上げがないと、主力投手も刺激がなくなり、結果としてチーム力は低下してしまいます。4番の中村真崇(元福岡)がケガで戦列を離れ、得点力の低下が予想される中、投手陣にかかるウエイトはさらに大きくなりました。

 前期もまだ折り返し地点に来たばかり。今季はジャパン・フューチャーベースボールリーグとの交流戦が組まれ、どのチームも高い勝率で勝ってきています。2位の高知、3位・愛媛との直接対決もまだまだ残っていますし、5月はビジターの試合が続きます。まずは上野が投げる今回の長崎3連戦はひとつのヤマです。投手陣13人はもちろん、野手も含めたチーム全員で足りない部分を補いながら戦っていきたいと思っています。


天野浩一(あまの・こういち)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
1979年4月12日、香川県出身。高松東高、四国学院大を経て2002年、ドラフト10巡目で広島に入団。2年目には貴重な中継ぎとして49試合に登板した。06年オフに自由契約となり、翌年、香川に入団。前期は先発、後期はリリーバーとして41試合に登板し、7勝6敗13セーブの好成績で最多セーブを獲得。リーグ優勝および独立リーグ日本一に大きく貢献した。08年はプレーイングコーチとして福井に入団。23試合に登板し、0勝2敗8セーブと主に抑えとして活躍した。09年は藤田平前監督の後任として福井の指揮を執った。現役時代(NPB)の通算成績は121試合、5勝6敗、防御率4.45。
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