長冨浩志前監督の解任に伴い、5月よりチームの指揮を任されました。ここまでは11勝20敗2分の最下位。投手陣はそこそこ抑えているのですが、打線にあと1本が出ていません。個々の能力は前期優勝した昨季と比べても、決して悪くないとみています。投打がかみ合えば、勝ち数と負け数がひっくり返ってもおかしくなかったと感じています。
 監督就任は突然でしたが、大きなとまどいはありませんでした。それまでも選手たちにはコーチとして接してきましたし、チーム状態は把握できていました。もちろん、これまでの野手担当から投手を含めた全体を見る立場になった点は大きな違いですが、自分の決断で責任をすべて負うことにむしろやりがいを感じています。

 チームを率いて、長冨前監督の方針を踏まえつつ、いくつか変更した部分もあります。まずは若手の体力強化です。NPBとの交流戦でいつも感じるのは、技術よりも体の差。やはり体幹の強い安定した肉体をつくらなければ、それに伴った技術も身につきません。特に若い選手はトレーニングに対する考え方ができていないため、こちらからメニューを設定する必要があります。

 先日、NPBとの交流試合で福岡に行った際、福岡ソフトバンクのドラフト4位・中原恵司(亜大)がいい打撃をしていました。さすがは大学時代、全日本の4番を打った選手だと感心して見ていると、実は入団当初は打撃がまったくダメだったそうです。そこで2軍で3カ月間、みっちり体幹トレーニングをした結果、プロのボールに対応可能になったと聞きました。アマチュアの有望株でさえそうなのですから、アイランドリーグの選手たちは言うまでもありません。若手の個人練習を増やしたことで、チームの主力選手も今まで以上にトレーニングに取り組むようになりました。これがチームにとって、いい刺激になればと思っています。

 もうひとつは陽耀華(元福岡)のショートコンバートです。兄の耀勲がソフトバンク、弟の岱鋼が北海道日本ハムの選手ということもあって、彼の能力は高いものがあります。ならば、最も守備力が求められるポジションで、より力を引き出したい。そう考えました。

 まだまだコンバートして間もないですから、ムダな動きは少なくありません。いい時もあれば、悪い時もあります。しかし、ガッツがあることは確かです。楽天に育成指名を受けた松井宏次もそうでしたが、やはり守備でも攻撃的にいく選手でなければレベルアップは望めません。とにかくプレーでアピールをして、スカウトの目に留まるショートになってほしいと感じています。

 二遊間のコンビを組む水口大地も昨年、松井と一緒にやった効果か、今季は積極的なプレーができています。あとは打撃の向上でしょう。彼は165センチと小柄なスイッチヒッター。それなのに打席で長打を狙っていることがよくあります。「本塁打1本より、四球を1つ選んだほうが価値がある」。そう言ってはいるのですが、どうも“誘惑”に負けているようです。出塁を狙って、自分のスタイルを確立できれば、もっと成績は残せるのではないでしょうか。

 残念ながら前期は負け越しが決まってしまいましたが、残り5試合、後期につながる戦いをしたいと考えています。チームが活性化するには、若い力の台頭は欠かせません。選手にとってチャンスは多いはずです。「オレを使ってくれ!」という姿勢をどんどんみせてほしい。それが後期の巻き返しにもつながると考えています。


古屋剛(ふるや・つよし)プロフィール>:長崎セインツ監督
1970年4月13日、東京都出身。駿台甲府高、拓大、新日鉄君津を経て1997年、ドラフト7位で内野手として西武に入団。翌年、1軍デビューを果たし、8年間のプロ生活で79試合に出場した。04年限りで戦力外通告を受け、現役引退。通算成績は打率.187、1本塁打、6打点。09年から長崎のコーチに就任し、10年5月から長冨浩志前監督の解任に伴い、監督に昇格した。
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