前期は20勝15敗3分の3位。前回のコラム(4月)の時点では借金2の状態でしたから、まずまず巻き返しはできました。先発がしっかりゲームメイクし、打線がつながれば勝てる。ここ数年、徳島はほぼ最下位が続いており、チーム全体が勝ち方を忘れていました。もう少し投打のバランスがかみ合えば、前期も優勝した香川や2位の高知と三つ巴の争いに持ちこめていたかもしれません。少なくとも後期に向けて勝負をかける態勢は整ったのではないでしょうか。
 さらに上を目指すには打倒香川、打倒高知が最大のハードルです。前期は香川と4勝4敗の五分の成績を残せましたが、これは相手のケガ人が多かったことによるもの。開幕直後に連敗した時には正直、力の差を感じました。

 香川は打線の破壊力はもちろん、機動力も持っているチームです。前期も徳島バッテリーはスキを突かれ、かなり足でかき回された印象があります。ここはバッテリーが共同作業でクイックや牽制を駆使し、足を封じなくてはいけません。むしろ機動力を使った細かい野球は徳島が目指すべき方向。香川のやりたいことをこちらがやるようなチームにしたいと思っています。

 一方、高知には2勝4敗2分と負け越しました。吉川岳、野原慎二郎と左右のエースに抑えられているのが分が悪い要因です。特に野原に対しては現在10連敗中で、もう2年以上も勝っていません。彼はテンポがよく、どんどんボールを投げ込んでくるタイプ。徳島のバッターは完全に相手のリズムに合わせて打たされています。まずは自分の間合いでしっかりスイングしない限り、いいピッチャーは打ち崩せません。打席の中でこれを徹底することが重要です。また吉川に対しては右打者が逃げるスクリューボールにつられています。こちらも基本中の基本ですが、しっかりボールを見極めることが攻略の糸口になるでしょう。

 前期を振り返ると、野手では3年目の斎藤雅俊が打率.322で首位打者争いを演じています。1年目が.208、2年目が.258でしたから、かなりの成長です。好調の理由のひとつは選球眼が良くなったことがあげられます。彼は高めのコースが大好きで、昨年までは吊られてボール球に手を出すことがよくありました。ストライクだけを絞って打てれば当然、確率は上がっていきます。

 また技術的にはスイングをレベルで振り切るように修正しました。それまでの斎藤はボールを上げようとするあまり、アッパー気味に抜くスタイルになっていました。しかし、これでは確実性が悪く、打ち損じのポップフライも増えてしまいます。ボールはしっかりバットで叩けば、勝手に飛距離が出るものです。スイングプレーン(面)をなるべく平らにし、まずはボールを着実にとらえる。この打ち方を身につけたことも打率上昇の要因です。

 新人ではショートの東弘明(八日市南高)が頑張っています。入団当初から守備、走塁は光るものがありましたが、期待以上だったのは打撃です。一時は打率3割を越え、今も.287でリーグのトップテンに入っています。彼の良さは精神面の強さと適応力の高さ。失敗を恐れず、前向きにプレーできている点が非常にプロ向きです。最近は試合が続いて、さすがに下半身に疲れがたまっている様子が見受けられましたが、打席の中で上体に頼ったスイングにならないよう修正するなど、プロとして成功する要素を持っています。

 まだ体重70キロと線が細く、NPBのスカウトからは体の弱さを指摘する声もあります。でも、このリーグで1年、2年と経験すれば、体力面は充分、改善できるでしょう。トライアウトの時点で他球団の監督、コーチも彼には高い評価をしていました。これから非常におもしろい存在になりそうです。

 昨年、在籍したディオーニ・ソリアーノが広島で支配下選手に登録され、先日の巨人戦で7回3失点と好投をみせました。あと一歩で勝ち投手を逃したものの、彼の活躍は選手たちの良い励みになっています。先日、本人と少し話をした時には「野球が楽しくてしょうがない」と言っていました。徳島にいた時は味方のエラーで心を乱して崩れるケースが目立ちましたが、NPBはバックの守りが固いため安心して投げられるはずです。彼の持ち味がうまく出せているのではないでしょうか。

 我々もソリアーノに負けてはいられません。選手たちも「ソリアーノができるなら、オレにも」という気持ちが出てきて当然でしょう。ピッチャーは1点でも少なく、バッターは1点でも多く――。ひとりひとりの選手が自分の力を最大限に発揮してくれれば、自ずからチームとしての結果も出てきます。

 オーナー会社の撤退もあり、まだ来年のことはどうなるか分かりません。でも、まずは今季の残り半分のシーズンをチーム一丸となって精一杯戦い抜きたいと思っています。引き続きの応援、よろしくお願いします。


堀江賢治(ほりえ・けんじ)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年8月8日、広島県出身。広陵高から89年、ドラフト4位で大洋(現横浜)に入団。3年目に1軍昇格を果たし、ショートを中心に61試合に出場する。95年、水尾嘉孝、渡部高史とともに、飯塚富司、伊藤敦規とのトレードでオリックスへ移籍。2軍で首位打者を獲得したが、翌年には高嶋徹とともに大島公一、久保充広とのトレードで近鉄へ。98年限りで引退後、地元で少年野球の指導をしていた。現役時代の通算成績は172試合、打率.250、4本塁打、29打点。09年より徳島の監督に就任。
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