G7からG8へ――。主要国首脳の国際会議のことではない。サッカー南アW杯でスペインが初優勝し、W杯優勝国・地域は8つになった。
 優勝回数の多い順に紹介するとブラジル5回、イタリア4回、ドイツ3回、ウルグアイ、アルゼンチン2回、イングランド、フランス、スペイン1回。近い将来、オランダが9カ国目となるだろう。今回も含め、準優勝3回。いつ優勝しても不思議ではない。10カ国目はポルトガルかメキシコか東欧勢か、それとも…。

 ジーコが日本にやってきた頃、W杯の優勝国・地域は、まだ6つだった。南米が3つ、欧州が3つと均衡が取れていた。7カ国目はいつ誕生するのかと聞くと、「そんなに早く来るとは思えない。なぜなら優勝を経験した6カ国(地域)にはW杯を勝ち抜く上で必要なノウハウとメンタル面での財産が備わっている。7カ国目が誕生する前に、優勝経験のある6チームは、さらに優勝回数を積み増すだろう」と答えた。
 ジーコが予想したように94年米国W杯ではブラジルが24年ぶりに頂点に立ち、優勝回数で頭ひとつ抜け出した。しかし、98年フランス大会では、“地の利”をいかしたフランスが初戴冠に成功し、G6時代は幕を閉じた。

 世界の政治経済の舵取りを担うG6がカナダを加えたG7になるのが翌76年。しかし、ロシアを加えたG8になるには、それから22年もかかった。
 サッカーW杯の場合はどうか。G6からフランスを加えたG7になるのに20年、スペインが仲間入りを果たしてG8になるのに、それから12年を要した。
 偶然にも似たような発展過程をたどってきた主要国首脳会議とサッカーW杯だが、前者の場合、新興11カ国を含めたG20に押され、かつてほどの影響力はない。世界経済を牽引しているのは中国やブラジル、インドなどの新参者である。

 サッカーにおいては日本も新興国の部類に入る。ゲタを履かせて中堅国だ。しかし、“伸びしろ”は欧州や中南米の古参中堅国をしのぐ。日本がG8に追いつくには韓国、中国、オーストラリアなどと“共闘”して、AFCにおける東アジアのレベルを上げ、魅力あるマーケットを構築するしかあるまい。要は「脱亜入欧」ではなく「興亜対欧」なのだ。10カ国目の優勝国はぜひアジアから出したい。

<この原稿は10年7月14日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
◎バックナンバーはこちらから