石川ミリオンスターズは北陸地区で前期優勝することができました。勝因はピッチャーの踏ん張りと、足を使った攻撃で相手のミスを誘って得点する野球ができたことだと思います。特に昨シーズンは35だった盗塁が、14日現在で既に76を数えています。これはひとえに森慎二監督の指導の賜物です。森監督は日頃から選手に「アウトになってもいいから、チャンスがあったら走っていこう」と言っていますし、実際に試合ではどんどん盗塁のサインを出すのです。これに触発されるように、選手自らが積極的に走るようになったことが大きかったと思います。
 現在、盗塁部門でリーグトップを走っているのが戸田衛(南部高−阪南大)です。彼はもともと足のある選手で、スタートも早いですし、タイミングをとるのもうまい。そこで今シーズンは本人に「走らないと、スカウトも見てくれないよ」ということを告げ、意識させるようにしました。試合でも果敢にサインを出したことで、自信を得たのでしょう。昨シーズンはわずか9だった盗塁数が既に30をマークしています。今後の課題としてはピッチャーのクセをつかむこと。そのためには三盗の数を増やすことです。ピッチャーの真後ろに陣取ることができる二塁では、ピッチャーを細かく観察することができます。ですから、クセをつかんで、今度はどんどん三盗を狙っていってほしいと思います。

 また、彼は四球も増えました。昨シーズンは7個でしたが、今シーズンは既に27個にものぼっています。この要因はやはり昨シーズンまで指導していただいた金森栄治前監督(現・千葉ロッテ一軍打撃兼野手チーフコーチ)の教えであった「最後までボールをよく見る」という教えを練習の時からきちんと守っていることに他なりません。後期もリードオフマンとしてチームを牽引していってほしいですね。

 実は足を使った攻めというのは、森監督とはチーム構想の段階から話し合っていたことでした。ですから、補強もそういう部分を重要視してのものだったのです。新戦力の一人が盗塁部門でベスト10入りしている小倉信之(国士舘高−国士舘大−茨城ゴールデンゴールズ−フェデックス)です。バッティングはまだまだ荒削りではあるものの、足も速く、盗塁技術もあります。また、守備範囲が広く、送球も正確です。しかし、三振が多いの課題ですね。追い込まれると焦って淡白になってしまうのです。ですから、きちんとボールを見分けられる選球眼が必要です。また、打ち取られるパターンとしてはフライが多い。せっかく俊足の持ち主なのですから、やはりゴロを打っていくことが重要となります。

 今シーズン、森監督が目指す「1点を取って、1点を守り抜く野球」をするためには、やはり強固な守備力が必要です。しかし、開幕当初はエラーが少なくありませんでした。それでもベテランの本間満(駒大岩見沢高−駒澤大−福岡ダイエー・ソフトバンク)はもちろんですが、ショートの戸田が安定した守備を見せ、周りに声をかけられるようになったことで、だいぶよくなりました。あとはセカンドが固定され、大事なセンターラインである二遊間がきっちりしてくれば、さら堅固な守備を敷くことができるようになるでしょう。

 そのセカンドの候補としては、高卒ルーキーの平田陸(元石川高)と4年目の佐野憲一(足羽高−福井工業大)の二人。平田はいいものはもっているのですが、何しろまだ19歳ですからまずは体力をつけていく必要があります。ただ、守備はソツなくこなすことができますので、後期はスタメンで使い続けていこうと思っています。ただし、バッティングは技術うんぬんというよりも、まだ木製バットになれておらず、現在16打数無安打と結果を残すことができていません。ですから、チャンスの場面では代打で佐野を出し、そのまま彼がセカンドの守備につくというのが現在のパターン。しかし守備の要でもありますから、なんとか後期のうちに固められればと思っているのですが……。

 さて、後期優勝するためには、前期で負け越した福井ミラクルエレファンツと群馬ダイヤモンドペガサスに勝ち越すことがポイントの一つとなります。前期は福井に4勝6敗2分、群馬には0勝4敗でした。両チームともにピッチャーがよく、石川の打線がなかなか打ち崩せていないというのが最大の敗因です。やはり重要なのはストライクとボールをきっちりと見極め、打つべきボールを打つということに尽きると思います。

 今月3日から後期が開幕しましたが、現在3試合を終えて2勝1敗とまずまずのスタートを切りました。後期も選手全員、高校野球に負けない“全力疾走”でテンポのいい、きびきびとした野球を見せたいと思っていますので、引き続き応援よろしくお願いします。



山出芳敬(やまで・よしたか)プロフィール>:石川ミリオンスターズコーチ
1983年4月3日、石川県出身。星陵高校、京都学園大学出身。卒業後は茨城ゴールデンゴールズに所属した。リーグ初年度の2007年、石川に入団。2年間、全試合に出場した。1年目の07年には全72試合に出場し、打率3割1分6厘、打点34、盗塁8(ベスト10)をマーク。チームの優勝に大きく貢献した。08年限りで現役引退し、09年よりコーチに就任した。

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