前期は13勝22敗3分の4位。前後期制になってから最低の勝率に終わってしまいました。今年から愛媛は県民球団となり、キャンプから例年以上に勝ちにこだわることを徹底してきました。選手補強も実施し、史上最強と呼べるメンバーがそろっています。ただ、「結果を出さなければ」との思いがプレッシャーとなり、チームが空回りしてしまった面は否めません。投打のバランスがかみ合わないまま、ズルズルと負けが込んでしまいました。そこへ有効な手を打てなかった点は、我々首脳陣の責任です。
 特に打線のつながりの悪さは深刻でした。唯一、好調だった武田陽介(神戸9クルーズ)が足を骨折し、6月初旬から戦列を離脱してからは3勝8敗2分。投手陣の踏ん張りに攻撃陣が応えられない日々が続きました。

 得点力が思うように上がらない最大の要因は4番・末次峰明の不振でしょう。昨季はリーグ3位の打率.348、同2位の16本塁打を放った主砲が、今季はここまで打率.265、6本塁打と波に乗れていません。この4連戦も15打数3安打と本来の打撃には程遠い内容でした。いい当たりが出ても、それが続きません。不調の原因は技術的なものではなく、メンタルの問題だと見ています。

 今季、末次は課題のインコースを克服しようと練習に取り組んできました。そのこと自体は上を目指すにあたって、決して間違いではありません。しかし、練習と試合は違います。試合では、まず自分の長所である思い切りのいいスイングをする。そんな割り切りも必要です。現状の末次をみていると、どうも練習での課題を打席で考えすぎているように映ります。彼は芯に当たればどこへでも飛ばせるパワーを持っています。武田が近々、スタメンに復帰予定ですから、末次の負担も軽くなるはず。4番の一振りで勝利を決める試合が生まれれば、チームも変わってくると感じています。

 ただでさえ、後期を勝ち抜くには打線の爆発が不可欠な状況です。まず今季よりエースナンバーを背負った篠原慎平が肩の違和感を訴え、しばらく投げられそうにありません。他にも故障者が出ており、投手のやりくりは四苦八苦しています。篠原と並ぶ先発3本柱の森辰夫、左腕の岸敬祐(JFBL大阪ゴールドビリケーンズ)も本調子には程遠く、前回の登板も早い回に降板せざるを得ませんでした。

 篠原に関しては、5月末に佐世保で中継ぎとして好投した際に左足首をねんざしました。その影響で投球の際に踏み込む左足のバランスが崩れ、フォームを乱してしまったのでしょう。早く復帰しようと無理をしたせいで、今度は肩に負担がかかってしまいました。彼はNPBのスカウトも注目している素材だけに、中途半端な形で戦列に戻すつもりはありません。優勝を目指すチームにとっては大きな痛手ですが、100%の状態で投げられるまで我慢したいと思っています。

 夏場は暑さもあって、どうしても投手はバテがきます。そこをいかに攻撃でカバーするかがポイントになるでしょう。打線の援護があれば、投手陣も思い切って投げることができます。5番の西村悟が2試合連続本塁打を放つなど、脇を固める打者の状態が上がってきました。繰り返しになりますが、残るは4番の復調です。後期の巻き返しのキーマンは末次。そう断言しておきましょう。


沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げ、08年は悲願の初優勝(後期)に導いた。
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