ドッジボールからヒントを掴んだステップシュートだけではない。大男たちを翻弄するフェイントはボクシングから得たものだ。
 宮の話。
「あるテレビ番組でボクシングの内藤大助さん(元WBC世界フライ級王者)とスパーリングする機会を頂いた。内藤さんは僕より小柄なのですが、フットワークが速い。構えていると、一瞬、バーンと視界から消えるんです。要するにフッと体勢を低くして、目の前からいなくなる。
 すると素人の僕は相手に合わせて体を下げる前に、思わず腕だけ下げてしまう。その瞬間にパンチが飛んでくる。“これはハンドボールにも使える”。僕はそう直感しました。
 シュートを打つ時に相手のディフェンスはガードしようと手を広げて立ちふさがりますよね。そこで一瞬、グッと体勢を低くしたら、相手は絶対に手を下げる。そこを狙ってシュートを打てばいいんです」

 実際、デンマークに遠征した際、この“内藤フェイント”を試したところ、おもしろいように決まったという。
 好奇心旺盛な宮は映画からもハンドボールに必要な動きを取り入れる。
 一時期、宮は「スパイダーマン」の動きを研究した。いかに低い姿勢を保ち、相手を翻弄するか。

「低い姿勢のままバシーッと突進し、相手が来たらスファーンと飛び上がる。スパイダーマンのような動きができたら怖いものなしですよ。糸さえ出さなければ反則にもなりませんから(笑)」

 スキルアップのためのヒントはどこにでも転がっている。ただ、それをモノにできるかどうかは、その人物のアンテナの高さに因る。貴重な情報をどこからでもキャッチできるようピンと張っておきたい。

<この原稿は「ビッグトゥモロー」2010年9月号に掲載されました>
◎バックナンバーはこちらから