出場停止となりディスコに入り浸る日々。サッカーができない悔しさを遊びで紛らわせた。
 しかし、それだけでは気持ちは晴れない。
 ピッチでの汚名はピッチで晴らすしかない。
 ラモスは深く、心に誓った。
「このままじゃ終われない」
 異国の地で、彼は人知れず奥歯を噛みしめた。

「給料のことなんて、どうでもいい。そんなこと構わない。おカネなんて、いつでも稼げる。それよりも大切なのは、ワタシがどういう人間か、サッカー選手か、それを皆に見せてやることよ。要するに復讐ですよ。このままじゃ終われない。
 だから試合には出られなくても、誰よりも練習はやったよ。肉離れを起こしたときも、自分でテーピングして、それで練習した。

 1年間の出場停止処分。といっても実際には1年半、試合に出られなかった。長かったですよ。復讐心があったから耐えられたんですよ。
 でもワタシは復讐しなかった。ワタシ、結構イヤなヤツだけど、それはしなかった。逆にソイツから“オレの息子、オマエのファンだからサインしてくれよ”と言われた。よく耐えられたなと、自分で自分のこと自慢できますよ」

 世に理不尽なことは掃いて捨てるほどある。
 そこで男は試される。
 耐えるか、逃げ出すか。
 我慢、我慢、我慢、そしてリベンジ。
 人生はその連続である。

<この原稿は「ビッグトゥモロー」2010年11月号に掲載されました>
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