後期は22勝12敗の2位。借金9に終わってしまった前期と比べて、ようやく投打のバランスがかみ合いました。まず投手陣では先発から左腕の岸敬祐能登原将から抑えの徳田将至につないで逃げ切る勝ちパターンが確立しました。また攻撃面でもバントやエンドランなどの細かいプレーができるようになったのも大きかったです。足を骨折していた武田陽介らがケガ人が戻り、戦力も整いました。
 ただ、後期を制した香川には一歩及びませんでした。特に優勝を争った最後の直接対決では元オリックスの前川勝彦にノーヒットノーランを喫しました。香川との対戦成績は3勝4敗1分とほぼ互角。それでも戦力などで“箱の大きさ”が愛媛と違うと感じたのも事実です。

 投手陣のコマが揃っていた香川に対し、愛媛は先発の軸に考えていた篠原慎平が故障で離脱。昨季の最多勝・森辰夫の調子も上がらず、5勝止まりと誤算が相次ぎました。新人の赤嶺祥悟がローテーションを守って2ケタ勝利をあげただけに、2人が本来の力を出してくれれば……との思いがあります。特に今年の夏は非常な暑さでしたから、投手の消耗は例年以上でした。他にもケガや体調不良で戦列を離れた者もおり、それが最終的な差になったと感じています。

 今回、僕は4年間務めた監督を契約満了をもって退任することになりました。今季はチームが県と全20市町から出資を受け、県民球団として再出発した1年目。戦力も過去3年にないほど、充実していました。是が非でも優勝して県民のみなさんに恩返ししたかっただけに、結果を残せなかったことには責任を感じています。

 これからチームがよりファンに愛され、強くなるにはどうすればいいか。監督・コーチ陣を一新するにあたり、球団フロントも、その方向性を決めた上の人選や補強を進めてほしいと感じています。勝利と育成、地域貢献――。これらは独立リーグの球団にとって大事な要素ですが、3つを並立させようとすると時として、それぞれが対立してしまうケースも出てきます。このバランスをとるためには、愛媛をどんなチームにしたいのかというプランがなければうまくいきません。

 チームとしては成果をあげられませんでしたが、個人ではドラフト指名が期待されている選手もいます。1人でも2人でも多くの選手が夢をかなえ、ファンのみなさんに明るい話題を提供してほしいものです。コーチ時代も含めれば、球団創設以来5年間、本当にお世話になりました。愛媛マンダリンパイレーツは日本にひとつしかない県民のみなさんに支えられている球団です。これからもたくさんの応援をよろしくお願いします。


沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げ、08年は悲願の初優勝(後期)に導いた。
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