植木竜太郎、小川冬樹の最強ペアで臨んだ国民体育大会は昨年同様、2回戦で姿を消す結果となった。昨年、秀島達哉監督が就任して以降、国体への強い思いを抱いてきた伊予銀行男子テニス部。今年こそは過去を上回る成績を、と意気込んでいただけに、悔しさはひとしおだろう。しかし、立ち止まっている余裕などない。シーズンの集大成である日本リーグがもうすぐそこまで迫ってきているのだ。国体で見えた課題を、日本リーグに向けてどう克服していくのか。秀島監督に訊いた。
(写真:今年は植木<右>小川ペアで国体に挑んだ)

「昨年の雪辱を果たそうと、1年間準備をしてきました。選手たちも本当に頑張っていただけに、残念でなりません」
 そう言って悔しさをにじませる秀島監督。敗因を訊いてみると、8ゲーム先取というショートゲームの難しさをあげた。
「ショートゲームでは出鼻をくじかれると、ズルズルとそのままいってしまうんです。例えば、1回戦の滋賀戦での植木がそうでした」

(写真:初戦、ダブルスでは軽快な動きを見せた植木選手)
 通常の3セットマッチなら、たとえ1セット目でリズムを崩しても、次に切り換えることが可能だ。しかし、国体のような8ゲーム先取のゲームではそれがなかなかできない。だからこそスタートが重要なのだという。初戦、植木選手はそのブラックホールにはまってしまったのだ。通常なら勝てる相手に、2−8と大差で敗れてしまった。しかし、小川選手がその分を取り返し、1−1で迎えたダブルスでは植木選手もようやくエンジンがかかったかのように、躍動感あるテニスで3−8と快勝。最後は植木選手のボレーで勝負を決めた。

 2回戦の相手は岐阜だった。大学生コンビの強豪だったが、まずは植木選手がタイブレークの末に勝利を収めると、続く小川選手も一気に4−0とリードを奪った。ところが、ここからガラッと様相が変わった。5−1、5−2……と相手の猛追にあい、6−6と並ばれると、そこから連続で2ゲームを落とし、結局6−8で敗れたのだ。次に行なわれたダブルスも植木、小川ペアは粘りを見せたが、5−8で敗れ、2回戦で姿を消すこととなった。

 しかし、秀島監督が危機感を募らせたのは2回戦敗退という結果よりも、その負け方にあった。
「昨シーズンの日本リーグで、うちのチームはファイナルセットまでもつれこんだゲームでは1勝6敗と大きく負け越しているんです。それを打開するために、劣勢な場面でも挽回できるような武器を身につけようと、今シーズンはサーブ強化に取り組んできました。ところが、国体でも同じような展開になってしまった。これでは昨シーズンと何ら変わっていないわけです。今後は国体での敗戦を細かく分析して、日本リーグに向けて改めて対策を考えていかないといけないと思っています」

 国体では個々の課題も浮き彫りとなった。植木選手は初戦、普段ならバックで打つところを、フォアに回り込んで逆クロスを打っては相手にバックのダウンザラインを決められていた。これは攻め方の考え方に問題があったようだ。
「後で相手に聞いたら、バックのストレートを待っていたというんです。ですから、植木は自分では攻めているつもりでも、フォアの逆クロスを打って、自らスペースをつくったところに相手は得意のショットを簡単に決めることができた。つまり、植木の攻め方が相手に利用されてしまったということです。ですから、あそこはゆっくりした展開で相手のタイミングをずらし、戦術を変える姿勢が必要だったんです」

 一方、小川選手はどうだろう。2回戦では有利に試合を進めながら、大どんでん返しにあったが、逆転負けはあまりない小川選手にとっては珍しい姿だった。
「相手は昨年のインカレインドアで準優勝している学生で、来年は強豪の協和発酵キリンに入っていることも決まっているんです。だからやる前から手強い相手だということは小川も認識していましたし、気合いが入っていたと思うんです。ところが、いざやってみると、4−0と自分がポンポンといってしまって……。それまで慎重だったのが、『早く勝負を決めてしまおう』という考えになってしまったんでしょうね。自らが速いテンポにしてしまいました。しかし、速いボールを打てば、それだけ相手のリターンも速く返ってくる。結局、小川自身がそのスピードについていけなくなってしまって、もう並ばれてからは受け身の姿勢になってしまいました」
(写真:2回戦では悔しい逆転負けを喫した小川選手)

 チームとして、個人として、課題は山積している。しかし、秀島監督は決して下を向いてはいない。プラスに考えれば、この時点で課題が浮き彫りになったことで、日本リーグまでに修正することができるからだ。これまで以上にチームのポテンシャルの高さを感じているだけに、うまく修正することができれば、さらなる飛躍へとつながるはず。指揮官はそう信じている。

 日本リーグまでの残り約1カ月間。果たして伊予銀行はどう課題を克服し、どこまでレベルアップを図ることができるのか。今年のチームは指揮官がオーダーを迷ってしまうほど、一人ひとりの能力は高くなっているという。それだけに、チームとしての引き出しは多く、どんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。国体での悔しい思いを糧にし、チーム一丸となって初のベスト4に挑む。


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