長く暑い夏が、ようやく終わったと思ったら、一気に肌寒くなった。季節外れの台風が去り、北では雪が舞う。もう冬にさしかかっている。
 2010年も残り60日を切り、「格闘技の日」大晦日が近づく。『Dynamite!!』(さいたまスーパーアリーナ)の例年通りの開催が発表された。加えて、昨年は『Dynamite!!』に参戦したSRCが独自に大会を開くことを先に発表している。イベントタイトルは、『戦極 Soul of Fight』で、日時は大晦日ではなく、その前日の12月30日、場所は有明コロシアムだ。
(写真:昨年大晦日の『Dynamite!!』は4万5千人を超える満員の観衆で盛り上がった)
 まずは『戦極 Soul of Fight』から。かつての大会名「戦極」を用いたイベントは、ロングラン興行になる。試合開始は異例の午前中、大会終了は午後9時を目安にして、25〜30試合が組まれるという。この中で、SRCウェルター級グランプリ決勝戦(中村K太郎vs.Yasubei榎本)、SRCバンタム級ASIAトーナメント準決勝の計3試合が行われることは確定しているが、25〜30試合のすべてが総合格闘技のカードではない。サンボ、レスリング、修斗、キックボクシング等の試合を組むことも計画しているようだ。

 大晦日の格闘技興行といえば、これまでテレビの視聴率とセットで語られることが多かった。だが、SRCは、そのしがらみから脱却して新たなスタイルでの大会を目指している。ディープなファンのニーズに応える、この点に期待したい。私も、立川競輪場で『KEIRINグランプリ』を見終えたらすぐに有明コロシアムに駆けつけるつもりだ。

 さて、『Dynamite!!』である。
 こちらは、ディープなファンというよりも、お茶の間の、大晦日しか格闘技を観ない人にも、わかりやすいイベントを作ろうと今年もすることだろう。昨年は、魔裟斗の引退試合(vs.アンディ・サワー)、石井慧の国内デビュー戦(vs.吉田秀彦)という2本の柱があった。さて、今年のメインカードは何になるのだろうか?

 実力優先ではなく、知名度優先で考えるならば、やはり石井慧が主役となるのだろう。では、石井の対戦相手は?
「ばーさく(桜庭和志)さんと闘いたい」
 そう石井は口にしていた。
 石井も桜庭もネームバリューでは十分だ。しかし、前回も書いたように全盛期を過ぎた桜庭に石井が絡むマッチメイクにインパクトがあるとは思えず、そこに必然性もない。「石井vs.桜庭」を見たいとは思わない。

 石井は、4日後の11月8日、両国国技館で開かれる『K-1 WORLD MAX 2010 FINAL』に特別参戦する。そこで、総合格闘技ルールの下、泉浩を破っているアンズ・“ノトリアス”・ナンセン(ニュージーランド)と闘うのだ。ナンセンは、世界のトップファイターではないが、現在の石井の実力を測定しやすいレベルの選手ではある。もし、ナンセンに敗れるようなことがあれば、大晦日の石井の試合には大きな期待はできないだろう。だが順当に勝ったならば、次(大晦日)こそは、世界のトップファイターにぶつかってほしい。

 12月11日(有明コロシアム)には『K-1 WORLD GP 2010 FINAL』が行われる。もし、ここでアリスター・オーフレイム(オランダ)が優勝したならば、勢いそのままに、大晦日、総合格闘技ルールで石井と対峙してほしい。そうなれば、自らよりも強い本格打撃系ファイターに挑む時に測られる石井の「気持ち」の部分を問うことができる。「石井×アリスター」は見応え十分なカードだと思うのだが……。

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近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)ほか。最新の編著『絶対、足が速くなる!』(日刊スポーツ出版社)が好評発売中。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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