シーズンオフに入り、2人のキャッチャーにFAの話題が出ている。
 広島の石原慶幸と西武の細川亨である。

 今季の成績は以下のとおり。
 石原 122試合、打率2割6分3厘、41打点、8本塁打。
 細川 112試合、打率1割9分1厘、33打点、8本塁打。

 2人とも球界を代表するキャッチャーである。石原は第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表に選ばれた。
 代表チームで総合コーチを務めた伊東勤(元西武監督)は「石原には安定感がある。どんな球種に対しても無難に捕球できる」と石原のキャッチングを絶賛していた。
 一方の細川は玄人筋からの評判がいい。その代表格が前東北楽天監督の野村克也だ。
「うまい配球するなぁと感じるのは細川ですね。70点、80点くらいの配球はしますね」
 毒舌で鳴るノムさんが珍しく選手を褒めたのには驚いた。

 キャッチャーを育てるのには時間がかかる。しかもケガの多いポジションであるため、どこの球団も即戦力捕手は喉から手が出る程欲しい。
 もちろん、そればかりではない。「一番欲しいのは情報」。そう語るのは在京球団のフロント幹部だ。「キャッチャーは、言わば、その球団の頭脳。敵の頭脳を獲得できれば、その球団のピッチャーを丸裸にできるだけでなく、自分のところのバッターがどう攻められていたかも明らかになる。貴重な情報が手に入るなら少々、カネがかかっても安いものです」
 そうした自らの価値が分かっているからこそ、彼らも強気な態度に出るのだろう。

 レギュラー捕手に逃げられた球団がいかに悲惨な道を辿るかはこの10年で7度最下位の横浜を見れば明らかだろう。谷繁元信(中日)に続いて相川亮二(東京ヤクルト)にも去られ、昨今は取っ換え引っ換えといった状況だ。捕手をして“扇の要”とはよく言ったものである。

<この原稿は2010年11月29日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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