第295回 朝倉海が返上した「バンタム級王座」奪取に挑む井上直樹は、キム・スーチョルに勝てるのか? 9・29『RIZIN.48』展望─

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「スーチョル選手は結果を残してきている強い選手だと思っています。タフな試合も多いので、そこに引き込まれないよう、飲まれないようにしっかりと自分の闘いをして勝ち切りたい。怪我無く、しっかりと練習もできています。良い状態に仕上げて試合に挑みますので期待してください!」

 

(写真:初のRIZINタイトルマッチに臨む井上<右> ©RIZIN FF)

 9月29日、さいたまスーパーアリーナ『RIZIN.48』で第7代RIZINバンタム級王座決定戦をキム・スーチョル(韓国)と闘う井上直樹(キルクリフFC)は、穏やかな口調ながら決意を込めてそう話した。

 

 待ちに待ったRIZIN王座初挑戦だ。

 まずは、ここまでの井上の戦歴を振り返ろう。

 16歳の時に『JML公武堂ファイト4』でMMA(総合格闘技)デビュー。この試合で一本勝ちを収めると、後に戦場を『DEEP』へと移しプロアマ合わせて15連勝を飾った。破竹の快進撃が高く評価され、日本人最年少19歳で『UFC』との契約を勝ち取る。

『UFC』での戦績は1勝1敗。

 

 2020年2月からは『RIZIN』に参戦し、トレント・ガーダム(オーストラリア)、渡部修斗(ストライプル新百合ヶ丘)、元谷友貴(フリー/現ATT)を破り3連勝を飾った。翌21年には『RIZINバンタム級JAPANグランプリトーナメント』にエントリー。1回戦で石渡伸太郎(CAVE)、2回戦では金太郎(パンクラス大阪稲垣組/現ATT)を下すも大晦日『RIZIN.33』準決勝で扇久保博正(パラエストラ松戸)に判定負けを喫した。

 

(写真:井上直樹vs.佐藤将光『RIZIN LANDMARK 9』2023年3月23日・神戸 ©RIZIN FF)

 1年後に再起し、22年大晦日『RIZIN.40』で瀧澤賢太(フリー/現Fired Up Gym)に腕ひしぎ十字固めを決めて勝利。その後、フアン・アーチュレッタ(米国)に敗れるも佐藤将光(坂口道場一族/Fight Base都立大)から勝利を収めている。

 王者だった朝倉海が『UFC』へと闘いの場を移した。扇久保はフライ級、アーチュレッタはフェザー級に転向。それらを考え合わせれば、現時点で井上はRIZINバンタム級のトップコンテンダーにある。

 本当は、朝倉と闘いたかったであろう。それは叶わなくなったが、井上の目標がRIZINのベルト奪取であることに変わりはない。

 

「7-3」でスーチョル優位

 

(©RIZIN FF)

 さて、井上は腰にベルトを巻けるのか?

 相手は強敵スーチョルである。戦績こそ22勝(14KO&一本)7敗1分けだが、強い相手との闘いが多く彼はすでに3本のベルトを腰に巻いている。

初代ONEバンタム級王座(2012年10月獲得)

第4代ROAD FCバンタム級王座(2017年4月獲得)

第4代ROAD FCフェザー級王座(2022年5月獲得)

 

 RIZINに限っての戦績は3勝1敗。

 1つの負けは、22年大晦日『RIZIN.40』でのアーチュレッタ戦で喫したもの。だが1-2のスプリット判定が示す通り内容はほぼ互角。「スーチョルが勝っていた」との声も多く聞かれたほどだった。

 また、井上が敗れている扇久保からも勝利を収めている。

 

 スーチョルのファイトスタイルは、実にアグレッシブだ。果敢に打撃を打ち込み、グラウンドに移行してからのパウンドも容赦がない。加えてスタミナも十分で、彼とフルラウンドを闘い抜いた相手は満身創痍に追い込まれている。

 

 スーチョルは言った。

「命をかけて準備をする。井上はフィジカルが強く技術も優れている。でも私は相手の良さを潰すのが得意。井上の良い点をすべて遮断し必ず勝つ!」

 

(写真:キム・スーチョルvs.中島太一『RIZIN.46』2024年4月29日・有明 ©RIZIN FF)

 この試合の私の予想は「7-3」でスーチョル優位。

 勢いと打撃力で勝るスーチョルが15分の間、主導権を握り続け判定で勝つと見る。実力が拮抗している両者だけに、組みと打撃での削り合いになる可能性が高い。そうなれば、スーチョルが勢いで押し切るだろう。

 井上が勝つとすれば、カウンターでの一撃、もしくはグラウンド攻防の中でチャンスを見出しサブミッションで決めるパターンか。いずれにせよ、互いが無傷ではリングを下りられぬ激闘は必至だ。

 

 同イベントでは、もう一つタイトルマッチが組まれている。

 ▶RIZINライト級タイトルマッチ

 ホベルト・サトシ・ソウザ(王者/ブラジル)vs.ルイス・グスタボ(ブラジル)

 サトシが王座防衛戦を行うのは約2年半ぶりで3度目。ブラジリアン・ファイター同士の濃密な闘いも大いに楽しみだ。

 

 

<直近の注目格闘技イベント>

▶9月15日(日)、東京ビッグサイトTFTホール/「GRACHAN 71」ハシモト・ブランドンvs.ラデック・ヘルボーイほか

▶9月16日(月・祝)、東京・後楽園ホール/「DEEP 121 IMPACT」バンタム級王座決定戦、福田龍彌vs.瀧澤謙太ほか

▶9月21日(土)、アクロス福岡「KNOCK OUT 2024 vol.4」/久井大夢vs. ペップンソン・フォームドジムほか

▶9月22日(日)、東京・後楽園ホール/「PROFESSIONAL SHOOTO 2024 Vol.7」環太平洋バンタム級チャンピオン決定トーナメント準決勝ほか

▶9月28日(土)、東京・後楽園ホール/「Krush.165」フェザー級王座決定トーナメント決勝、石田龍大vs.橋本雷汰ほか

▶9月29日(日)、東京・国立代々木競技場第二体育館/「K-1 WORLD MAX 2024」-55キロ世界最強決定トーナメントほか

▶9月29日(日)、東京・立川ステージガーデン/「PANCRASE 347」ライト級タイトルマッチ、雑賀ヤン坊 達也vs.久米鷹介ほか

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)プロフィール>

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)

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