2010年シーズン、富山サンダーバーズは前後期とも最下位に終わりました。故障者が多く、苦しいシーズンであったことは確かです。しかし、結果が全てであるプロの世界で、それは言い訳にすぎません。この結果をしっかりと受け止めて反省し、来シーズンへとつなげていきたい。今はそういう思いでいっぱいです。
 今シーズンは肩やヒジを故障する選手が少なくありませんでした。何が原因かは一概には言えませんが、開幕までの準備が不十分だったことは否めません。今年のキャンプは例年以上に気温が低く、悪天候の日が続きました。開幕1カ月前になっても、まだヒザの上まで雪が積もっている状態だったのです。これではグラウンドでの練習は不可能です。さらに室内練習場の環境整備も十分ではなかったため、選手にとっては酷なキャンプとなってしまいました。

 開幕の新潟アルビレックスBC戦こそ1点差で逃げ切り、白星スタートを切ったものの、続く信濃グランセローズ、福井ミラクルエレファンツには2ケタ失点を喫し、連日での大敗。それでも4月はなんとか5勝3敗と勝ち越したものの、5月以降は負け越しが続きました。これでは選手のモチベーションも上がるわけがありません。これについては、選手というよりも私たち首脳陣が反省すべき点です。選手にもっとうまく働きかけなければいけなかったと思っています。

 しかし、そんな中でも最後には朗報が届きました。リーグでただ一人、加藤貴大(八王子高−明治学院大)が東北楽天に育成1位指名を受けたのです。彼が素晴らしい潜在能力を秘めたピッチャーだということは、入団当初からわかっていました。しかし、オープン戦でヒザを故障、さらにシーズン途中には脇腹を痛めるなど、今シーズンは満身創痍の状態でした。それでもチームの台所事情は苦しく、加藤は先発、抑えとフル回転してくれました。

 加藤の武器は何といってもストレートのキレです。そして球数が少なくても勢いで抑えられるピッチャーということでしょう。制球力に関しては正直、まだプロのレベルではありません。しかし、少し荒れ気味というのも彼の魅力の一つになっているのではないかと思います。彼はまだ23歳と若く、伸びしろは十分にあります。楽天のスカウトも変にまとまっておらず、今後の成長が期待できるところを評価してくれたのではないかと思います。

 加藤はストレートとカーブ、スライダーを主体としています。前述したように、そのなかでも生命線となるのがストレート。本当にいい時のストレートは、NPBの第一線でも通用するほどのキレがあります。とはいっても、今は40〜50球に1球くらいの確率でしか投げられません。この確率をもっと高めていくことができるかどうかが、支配下登録の条件となることでしょう。

 まず来年1年間はじっくりとトレーニングをして、ケガをしない体づくりをしてほしいと思います。「一日でも早く上にいきたい」と逸る気持ちもわかりますが、焦ってまたケガをしては何もなりません。しっかりと地に足をつけて、一段一段、確実にステップを踏んでいってほしいですね。

 さて、今オフは多くの選手がチームを離れました。そのため、来シーズンはゼロからのチームづくりとなります。12月10日に行なわれたドラフト会議ではほぼ希望通りの補強をすることができました。チーム構想としては、今シーズン同様、守備を重視してやっていくつもりです。投手を中心に1点を守り勝つ野球。それができるよう、我々首脳陣も選手が必死さを出せるような環境づくりをしていきたいと思います。


横田久則(よこた・ひさのり)プロフィール>:富山サンダーバーズ監督
1967年9月8日、和歌山県出身。那賀高からドラフト6位で指名を受けて1986年、西武に入団した。その後、ロッテ、阪神へと移籍。02年オフに阪神から戦力外通告を受けるも、台湾の兄弟エレファンツに入団した。2年目には5勝を挙げる活躍を見せたが、肩の故障などに苦しみ、06年限りで引退を決意。07年より富山サンダーバーズのコーチに就任。2010年より2代目監督として指揮を執る。
◎バックナンバーはこちらから