森保監督とオーストラリア代表新監督の“縁”
サッカー日本代表が10月のアジア最終予選2連戦(現地時間10月10日、対サウジアラビア代表、15日、対オーストラリア代表)に臨む27人のメンバーを発表した。
今年7月にサンフレッチェ広島からイングランド2部ブラックバーンに移籍し、8試合4得点と絶好調の大橋祐紀を初招集。パリオリンピックでキャプテンとして引っ張った藤田譲瑠チマ(ベルギー1部シント・トロイデン)、そしてスイス1部グラスホッパーでレギュラーを張る瀬古歩夢を復帰させている。前回に続き、高井幸大(川崎フロンターレ)、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)も選ばれた。構成としてはFWを一枚減らして中盤を増やす形となった。
9月は欧州のシーズンが始まったばかりでコンディション的に懸念されながらも、結果的には中国代表にホームで7-0、バーレーン代表に5-0と圧倒的な強さで2連勝スタートを飾った。C組のライバル2チームと戦うこの10月が前半戦のヤマ場となるだけにしっかりと勝ち点を積み上げたいところだ。
10月にジッダでのサウジアラビア戦、ホームに戻ってオーストラリアと戦うスケジュールは前回の最終予選とまったく一緒。3年前はサウジアラビアに0-1で敗れ、3試合で1勝2敗と危機に陥りながらもオーストラリアを2-1で振り切って息を吹き返している。
ただ今回、日本は追われる立場となる。サウジアラビアは9月の初戦、多くの帰化選手をそろえるインドネシア代表にホームで引き分け、中国代表とのアウェイマッチでは先制されながらも何とか2-1で振り切った。一方のオーストラリアはバーレーンにホームで敗れる波乱のスタートとなり、アウェイに出向いたインドネシア戦もスコアレスドローに終わっている。この結果を受けてグラハム・アーノルド監督が辞任し、トニー・ポポビッチ新監督が就任したばかりだ。日本が前回、自分たちのターニングポイントにしたように、サウジアラビア、オーストラリアも流れを変える10月シリーズにしたいところ。日本としてはギアを上げてくる相手に対して受け身にならず、9月同様にアグレッシブに、集中力を最後まで持続して戦っていくことが重要になってくる。
特にオーストラリア戦は“友人対決”としても注目を集めている。
森保監督とポポビッチ新監督は現役時代、サンフレッチェ広島のチームメイトであり、ともにプレーした仲。引退してからも交流が続いた。森保が3度、J1制覇を果たした広島の監督を離任した2017年夏、わずかな充電期間を終えてから指導者としてもう一度勉強しようと監督修行の旅に出掛けた。最初に訪れたのが、ポポビッチが指揮を執るオーストラリアのウェスタン・シドニーであった。2014年にはACLを制し、ポポビッチはAFC年間最優秀監督にも選ばれている。
森保がこう明かしてくれたことがある。
「ポポに連絡を取ったら『通訳をつけないで一人で来てくれればいい。大事なのはサッカー。言葉は二の次だ』と言ってくれて。サンフレッチェからクリスタルパレスに移籍して、引退後はそこに戻ってコーチを務めていました。オーストラリアでも指導者として活躍している彼から学びたいと思い、チームのなかに入ってミーティングにも参加させてもらいました」
選手への伝え方、伝わり方で森保自身、感じたことがあったという。そして大いに刺激を受けた。指揮官としてより高みを目指していこうとネジを巻くきっかけになったポポビッチとの最終予選での再会は、どこか運命的にも思えてくる。
森保は今回の2連戦に向けてこのように語っている。
「9月が良かったから10月の勝利が保証されているかと言ったら、まったくそんなことはない。一戦必勝の気持ちを持って準備から戦いに挑まなきゃいけないかなって思っています」
対サウジアラビア、対オーストラリアいずれも厳しい戦いになることは間違いない。良い流れを加速させる意味でも“一戦必勝”のマインドで大事な2連戦に臨む。