豪州と1-1。手堅い森保采配の理由

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 圧倒したほうが必ず勝つわけではない。それがサッカーでもある。

 

 15日に埼玉スタジアムで行なわれたアジア最終予選、日本代表とオーストラリア代表の一戦は1-1の痛み分けに終わった。

 

 シュート数は日本の10に対し、オーストラリアはわずかに1。ボール支配率でも日本が6割強の数字を叩き出し、CKに至ってはオーストラリアに一つも与えていない。隙と言えばクロスから許したオウンゴールのみ。逆に“オウンゴール返し”で同点に追いついて勝ち越しを狙うべく攻め立てたものの、守りに重心を置く相手を崩せないままホイッスルが鳴らされた。

 

 内容からすれば日本が勝ち点「2」を失ったようにも映る。ただ、5日前には前回敗れたジッダでサウジアラビア代表を2-0で退けて3連勝をマークしており、グループCのライバルとなるサウジアラビア、オーストラリア相手に1勝1分けは決して悪くない。灼熱のアウェイから移動しての試合ゆえ、コンディションも万全ではなかったはずだ。

 

 一方、オーストラリアは9月の2連戦を1分け1敗とつまずいたことで指揮官交代となった。トニー・ポポヴィッチ監督が就任して初戦となった中国代表とのホーム戦に3-1と逆転勝利を収めたとはいえ、今回できれば続けて勝ち点3が欲しかったところ。しかし日本を最大限にリスペクトした戦い方は「勝ち点1でOK」の姿勢がのぞいた。お互いにリスクマネジメントを取り外すことなく、最低限の結果を手にした形となった。

 

 森保一監督は試合後の記者会見でこのように述べている。

 

「OGというアクシデントで先制点を許して、ややもすると崩れてもおかしくないような展開で選手たちがしっかりやるべきことを続け、そして追いつくために、落ち着いてギアを上げながら同点に追いついた。そして、逆転するチャンスはしっかりとつくれたので悔しい結果ではありますが、選手たちがやってくれた試合中のプロセス、試合に至るまでの日々のプロセスを評価したい」

 

 同点に追いついた後半31分以降、リスクを冒してでもゴールに傾注するならば4バックなどのシステム変更や、同じ3-4-2-1を継続するにしても鎌田大地をボランチに回し、ベンチに控えていた前田大然、旗手怜央といったカードを切る手もあった。だが最後の交代は1トップの上田綺世を小川航基に入れ替えだけにとどまり、1枠を使わなかった。

 

 この試合で最も避けるべきは勝ち点を奪えず、相手に勝ち点3を与えること。ほぼ完璧に守備のタスクをこなしていたチームの「いい守備」を崩してまでゴールにこだわれば、リスクを高めることにもつながる。アクシデントに近い失点がないとも言い切れない。エラーらしいエラーが起こっていない以上、あくまで現状の3―4-2―1で交代選手を使いながら押し切りたいという指揮官の選択は理解できる。

 

 前回の最終予選、森保監督率いる日本代表は序盤、1勝2敗という最悪のスタートを切った。4戦目、システムを4-3-3に変更したホームのオーストラリア戦に勝利して弾みをつけ、この試合を境に負けなしでカタールワールドカップのチケットをもぎ取った。逆にスタートから3連勝を飾っていたオーストラリアは、この日本戦を境に調子を落としてプレーオフに回っている。いくら今回の北中米ワールドカップからアジアの枠が「8.5」に大幅に拡大されようとも、一つの敗北が今後の流れを変えてしまう可能性は捨て切れない。

 

 ワールドカップ優勝という目標を掲げるなら、オーストラリアを力でねじ伏せるくらいでなければならないという声はあるだろう。実際、そのポテンシャルは今の日本の選手たちにはある。しかしながらいくら注意深く戦ったところで、失点したオウンゴールのように落とし穴がどこにあるかは分からない。理想よりも現実に沿った手堅い策をチョイスして、モチベーションの高いオーストラリア相手にベストではなくとも次につながるベターな結果を手にしたことは事実だ。

 

「最終予選で勝っていくことは本当に簡単じゃないとオーストラリア戦で再確認できました。11月のアウェイ2連戦(対インドネシア代表、中国代表)、そして残り試合と、厳しい戦いを覚悟して1試合1試合、最高の準備をして臨まなければならない」

 

 まずは北中米ワールドカップのチケットを。少しでも早く手に入れられれば、テストや準備に充てる時間を増やすこともできる。最終予選において森保監督の“現実路線”がブレることはないだろう。

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