アイランドリーグは2月1日から合同自主トレがスタートし、新チームが事実上、始動する形になります。現在は香川に残ってトレーニングをしている選手、故郷などに戻って練習をしている選手とさまざまです。オフは試合や決められた練習がない分、シーズン中と比べて時間はあります。疲れを癒し、息抜きをすることも大切でしょう。ただ、何事もメリハリが肝心です。野球選手としての自覚を持ち、去年よりも力をつけて全員が帰ってきてくれることを期待しています。
 現時点で香川は2人の投手を補強しました。1人は合同トライアウトで獲得した河野(かわの)忠義(松山聖陵高)です。彼はMAX140キロを投げる本格派右腕。今回のトライアウトは即戦力が少ない中、将来性を感じさせるピッチングをみせてくれました。

 最も興味を抱いたのは大きく縦に割れるカーブです。あれほどしっかり曲がる変化球は教えられてもなかなか投げられるものではありません。まず、そこにセンスを感じました。加えて、その制球が良い点もプラス材料です。困った時にストレートだけではなく、カーブでもストライクが取れる。武器になるボールを持っていることはNPBを目指す上での第一条件です。

 MAX140キロのストレートも、体を鍛えればまだまだ伸びるでしょう。実戦経験の中で、成長すれば、1〜2年でドラフト指名も可能な素材だとみています。

 もう1人は同郷でカープの後輩でもある山中達也です。彼は昨季まで4年間、育成選手としてカープに在籍しましたが、結局、支配下登録されないまま、自由契約となってしまいました。しかし、アイランドリーグにはない恵まれた環境で練習を積んでいただけに体はできています。コーチ陣から教わり、ストライクをとる投球術も身についているようです。

 左腕というアドバンテージもありながら、支配下登録されなかった理由は、まずストレートにあるでしょう。球速は130キロ台と平凡。これではNPBの打者を牛耳ることはできません。せめて140キロ台が出るように直球を磨くべきだと考えています。現時点では先発、中継ぎ、どちらで起用するかまだ分かりませんが、ゲームの中でどんどん投げ込むことが重要です。僕が実現できなかったNPB復帰の夢が叶えられるようサポートしていきたいと思っています。

 30名程度の選手を抱え、ベンチ入り(25名)を競争させた昨季とは一転し、今季のガイナーズは少数精鋭でシーズンに臨みます。練習生を除けば22〜23人のチームになるのではないでしょうか。空いた選手枠には、ぜひ練習生が力をつけ、入りこんでほしいものです。投手陣に関しては、独立リーグ日本一に貢献した前川勝彦高尾健太伊藤秀範ら主力投手が多く残留したため、彼らが力を発揮してくれれば、現有戦力でもそう大崩れはしないでしょう。

 ひとつポイントをあげるとすれば、橋本亮馬(横浜打撃投手)が抜けたクローザーを誰にするのか。実は、まだ名前は明かせませんが、140キロ台後半の速球を投げる抑え候補と今、入団に向けて話を進めています。その選手が香川に来れば、まさに秘密兵器になるでしょう。ぜひ、正式発表を心待ちにしていてください。このあたりの投手陣の構想については、また次回、開幕前後の段階でみなさんにお伝えできればと考えています。

 香川でのコーチ1年目だった去年は育成ながら上野啓輔がNPB入りを果たしました。今年は1人と言わず、2人、3人と1人でも多くのピッチャーを上のレベルに送り込みたいところです。そして、現に可能性を秘めた投手たちが、今年の香川にはたくさんいます。

 昨年、最多勝のタイトルを獲得した高尾は変化球のキレや投球テンポ、打者との駆け引きはもうNPBの2軍レベル以上に達しています。リリーフでいい仕事をした左腕の西村拓也、昨季途中に長崎から移籍した酒井大介もドラフト候補生です。彼らに共通している課題はやはりストレート。真っすぐでもスカウトにアピールできるかどうかがNPB入りへの分かれ道になります。またリーグMVPに輝いた前川は改めて実力の高さを示しました。2年連続で好内容をみせれば、左腕不足に泣く球団からシーズン途中でも声がかかるのではないかと期待しています。

 その意味で、2011年は選手の進化が楽しみな1年になりそうです。今年も西田真二監督をサポートしつつ、独立リーグ2年連続日本一、そしてドラフトでの大量指名に向け、しっかり選手たちを鍛えていきます。香川のみなさん、1年間よろしくお願いします。


天野浩一(あまの・こういち)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
1979年4月12日、香川県出身。高松東高、四国学院大を経て2002年、ドラフト10巡目で広島に入団。2年目には貴重な中継ぎとして49試合に登板した。06年オフに自由契約となり、翌年、香川に入団。前期は先発、後期はリリーバーとして41試合に登板し、7勝6敗13セーブの好成績で最多セーブを獲得。リーグ優勝および独立リーグ日本一に大きく貢献した。08年はプレーイングコーチとして福井に入団。23試合に登板し、0勝2敗8セーブと主に抑えとして活躍した。09年は藤田平前監督の後任として福井の指揮を執った。現役時代(NPB)の通算成績は121試合、5勝6敗、防御率4.45。
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