今日2月1日から土佐清水市でのキャンプがスタートしました。監督就任以来、年々選手の仕上がりが良く、今は楽しみな気持ちでいっぱいです。高知はNPBや韓国の球団もキャンプを張っており、早速、12日と14日はSKワイバーンズ、15日には阪神2軍との練習試合が組まれています。その分、選手たちも早く体をつくらなければという意識が生まれているのでしょう。他チームより早めに実戦ができるのは高知のアドバンテージだと感じています。
 今年からチームに加わる新戦力は投手2人、野手5人。高知は投手陣の頭数が少ないため、本音はもう1人補強したかったところです。ただ、いい投手はどこも欲しいもの。トライアウトではなかなかいい人材を確保することができませんでした。それでもドラフトで指名した木幡翔(東海大四高−Darton College−米独立リーグ)、西畑英俊(西宮高−環太平洋大)は右の本格派。即戦力として期待できそうです。

 木幡はトライアウトでも140キロ台の速球をみせてくれました。球威があるので、抑え候補のひとりとして考えています。これからの実戦で勢いのあるボールをコントロールよく投げられれば、最終回のマウンドを彼に託すことになるでしょう。

 一方の西畑は先発タイプとみています。まだ185センチ、72キロを線は細いのですが、鍛えれば球速もアップして化けそうな気がしています。今季も高知は右の野原慎二郎山隈茂喜、そして左の吉川岳の3本柱が健在です。4人目の先発枠を西畑や4年目の山中智貴、地元出身の濱田兼信が競う形になるとみています。

 このオフは野手でも逸材を獲得できました。まずは外野手の鈴木達史(東海大甲府高−国際武道大)。彼は足があり打撃もシャープなトップバッタータイプです。昨季、リードオフマンとして打率.302、46盗塁の成績で福岡ソフトバンクに育成入団した安田圭佑と比較しても、春の時点での打撃は上かもしれません。何より振りがシャープでしっかりしています。ぜひ安田同様、1年でNPBを狙って欲しい選手のひとりです。

 もうひとりはこれまた外野手の迫留駿(日本航空第二高(中退)−京都フルカウンツ)。彼は、このリーグでは珍しい左の長距離砲になる可能性を秘めています。185センチ、85キロと体も大柄で、クリーンアップ候補です。まだ20歳ですから、長所を生かし、大きく育てたいと考えています。

 長崎から救済ドラフトで田中宏明も入り、外野手のレギュラー争いは熾烈になりそうです。長年、主力だった梶田宙すら、うかうかできないでしょう。競争の中で成長を促せる補強ができ、満足しています。

 コーチ陣も今季は一新しました。野手を担当するのは昨年までソフトバンクで現役を張っていた辻武史コーチです。指導者は初の経験ですが、ノックも打撃投手もそつなくこなしています。彼の良さは何と言っても若さ。現役を退いて20年以上経つ僕とは違い、彼は選手たちに良いお手本を見せられます。正直、今でも選手としてプレーすれば、高知の若手よりレベルは上でしょう。高い次元の野球を身をもって示せることはチームにとってプラスになるはずです。

 そして、投手を担当するのは……と紹介したいところですが、実はまだ新コーチが決まっていません。独立リーグは指導者にNPBのような好条件を出せるわけでもなく、それぞれの生活を考えれば無理にお願いすることはできません。ただ、野球界のために力になりたいというPBはどこかにいると思っています。ぜひ、我こそはという元投手の方がいらっしゃいましたら、ぜひ球団にご連絡をいただければうれしいです。

 土佐清水で5日間、練習した後は、大方で2次キャンプを張る予定です。大方は僕も南海時代、プロ野球選手としての第一歩を刻んだ場所。先日、グラウンドを下見に行きましたが、当時と雰囲気は変わらず、懐かしい気持ちになりました。僕も原点に戻って1年間、頑張りたいと思います。

 もちろん目標はチームの優勝とドラフトでの本指名です。両方を狙える素材は充分に整っています。野球で地元を盛り上げられる1年になるよう、選手とともに一生懸命取り組みます。今季もみなさんの温かい応援をよろしくお願いします。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸(元長崎監督)と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は千葉ロッテの内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。
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