ランニング女子のロールモデルといえば長谷川理恵。モデルとしての活動の傍らフルマラソンを3時間15分で走ってしまう格好の良さは、走る女性たちの憧れであり、スポーツ芸能人の象徴でもある。その彼女が今年掲げた目標はホノルルトライアスロン。スイム1500m、自転車40km、ランニング10kmを走り抜けるオリンピックディスタンスのトライアスロンだ。
 今ではスポーティな印象が強い彼女も、ランニングをはじめたきっかけはTVの仕事だった。それまでは無縁だった「走る」という行為を半ば仕事として始め、面白さに気づいていく。そんな中でマラソンランナーの谷川真理さんと出会い、ますます惹きこまれ、タイムを追求するまでに。仕事を調整し、走ることを生活の中で最優先にするライフスタイルとなり、その結果、3時間15分という記録が生まれた。これは一般的な女子ではかなりのもの。努力でしか出すことの出来ない「タイム」を出したことで、彼女に対する周囲の評価は高まった。その後はサーフィンなども楽しみながら自然体で活動を続けている彼女がどうしてトライアスロンだったのか?

 実はトライアスロンの誘いは1年前から友人たちから受けていた。でも、「泳ぎも苦手だし、過酷過ぎて私には無理」ということで断り、実行に移すことを考えもしなかったという。ところがある時、LAの友人の「泳げなくても平泳ぎでマイペースでやればなんとかなるよ」という言葉に、なんとなく「私にも出来るかも」という思いが沸いてくる。もともと、周囲にトライアスロンを行う人が多かったこともあり、傾きかけた気持ちを示してから周囲の動きは速かった。「あれよあれよと今回の話になり、どんどん環境が整っちゃってー(笑)。もうここまで来たらやるしかないですよね」と彼女。すっかりトライアスリートへのレールは敷かれているのである。
(写真:室内でトレーニング中)

 しかし、ただ人の敷いたレールを走るのは彼女のスタイルではない。「やるからには、ちゃんとやりたいんです!」と11月の決意表明時に語った目つきは、あまりに真剣でこちらが驚くほど。この真面目さ、熱意が「3時間15分」というタイムに導いたのだろう。そういえば、谷川真理さんに会ったときにこんな言葉をかけられた。
「理恵ちゃんのコーチやるんでしょう? 彼女は気合が入りすぎてやりすぎの傾向があるので、上手に止めてあげてね」
 マラソン挑戦時期、彼女がどんな態度で練習に臨んでいたのかが、うかがい知れる言葉である。この時点で、私の役目は練習をさせるのではなく、練習を止める係りであるというのがよく分かった!?

「今回はまずちゃんと走りきることが目標」という彼女。そう、やることが多くて時間の長いこのスポーツは欲張らないで、まずはフィニッシュラインを越えることが大切だ。他のスポーツ経験があるだけにすぐに周りもタイムを気にするが、トライアスロンは他人と戦うのではなく、自身に挑戦するスポーツ。まずは自分に負けないで、最後まで走れるようなレースをして欲しい。

「未体験でまだ想像もできないけど、やるべきこと、言われたことをコツコツ積み重ねるしかないです。あと4カ月頑張りますよ!」
 うーん、なんとも真面目なコメント。それが自然に出でてくるのだから、きっと何事にもそんな姿勢なのだろう。
(写真:トレーニングの準備は万端!?)

 そして因果のホノルル。ホノルルマラソンで始まった彼女のマラソンストーリー、今度はホノルルトライアスロンでトライアスロンストーリーをスタートさせる。これも彼女にとっては運命めいたものを感じたという。

 今年のホノルルトライアスロンは5月15日。そのホノルルで、彼女の努力はどんな形で発揮されるのか。楽しみに見守っていきたいと思う。

>>ホノルルトライアスロンHP

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール
 スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦している。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための新会社「株式会社アスロニア」の代表取締役に就任。『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)が発売中。
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