WD名古屋、東京GB破り白星スタート ~SV.LEAGUE~
12日、「2024-25 大同生命SV.LEAGUE MEN」(SVリーグ男子)第1節が東京体育館で行われ、ウルフドッグス名古屋(WD名古屋)が東京グレートベアーズ(東京GB)を3対1で下した。
東京体育館に6526人が詰め掛けた開幕戦から一夜明け、東京GB仕様のピンクに“衣替え”したアリーナに6459人が集まった。東京スカパラダイスオーケストラの演奏や東京都出身のモデルで女優の本田翼が始球式を務めるなど東京GBは試合の盛り上げや演出にこだわりを見せた。
試合はホームの東京GBが優位に展開するが豊田合成時代からリーグ優勝などタイトルを掴んでおり、優勝候補の一角と目されていWD名古屋が徐々にペースを握っていく。今季新加入のオランダ代表ニミル・アブデルアジズが強打を次々とコートに叩き込む。第1セットは22−22から水町泰杜がピンチサーバーで登場。サービスエースを2本決めるなどブレイク連発して25−22で先取した。
「1セット目、苦しい展開でそれぞれが仕事をし、取れたことは自信になった。1セット目を取れたことはすごく大きかった」。試合後、セッターの深津英臣がそう振り返ったように流れが落ち着かない第1セットを取ったことが大きかった。第2セットは25−21。第3セットこそ東京GBに23−25で奪われたものの、第4セットは25−20で逆転の流れを相手につくらせなかった。
シーズン初戦を白星スタートしたWD名古屋は新戦力が躍動した。アブデルアジズは得点源となり、期待に違わぬ活躍。パナソニックパンサーズ(現大阪ブルテオン)から加入した司令塔の深津英臣は兄・旭弘との兄弟対決も注目されたが安定したセットアップで攻撃陣を操った。リベロの渡辺俊介は要所でのレシーブ、早稲田大学卒の新人・水町はビッグサーブと持ち味を存分に発揮した。
敗れた東京GBは第3セットを取ってストレート負けこそ免れたが、ピンクに染めたファンの前で開幕戦勝利を飾れなかった。元日本代表の柳田将洋はこう試合を振り返った。
「ウルフドッグスさんのブロック、ディフェンスがしっかりと機能し、そこに苦しんだ印象がありました。我々としては、誰を抑え、どこを潰しにかかるかということをもっと明確に大胆にやってもよかったのかなと思っています。そこを修正し、相手をまず苦しめる展開に持ち込めるような試合をしていきたい」
11日に行われたサントリーサンバーズ大阪と大阪ブルテオンの開幕戦は地上波フジテレビが生中継した。選手たちもこの試合中継を目にした。柳田は「バレーボール界にとってポジティブなこと」と歓迎した。
「様々なスポーツや情報などの見るコンテンツは多岐にわたる。とはいえ地上波という影響に勝るものはないと思っています。地上波でSVリーグの開幕戦を観ている自分がいるのは不思議な感覚でした。こうなって欲しいと、何年も負けから思っていたことが一つひとつ実現しているのは、僕自身選手としてすごく幸せなこと。バレー界にとってポジティブなことと思って試合を観ていました」
パリオリンピックに出場した深津旭弘は、リーグの熱量や期待感をつぶさに感じている。
「代表の試合はTV放映があって、その盛り上がりがリーグに続いていかないという現状を選手たちは昔から感じていた。昨日、リーグの開幕戦が地上波で生中継された。いろいろな方たちと努力がいい方向に進んでいると感じた。自分たちの試合も多くの人が来るのはわかっていた。今日の体育館に来て、昨日の盛り上がりよりもあるんじゃないかと演出をチームとしてやってもらえた。舞台が整った。あとは自分たちが勝つだけという状況だったのでやる気が出ました。負けて本当に悔しい」
バレーボールの国内トップリーグであるVリーグが将来の完全プロ化を念頭にスタートしたSVリーグ。この熱量を持続していくことが大事になる。そのためには選手、運営がコート内外で魅せていかなければならないだろう。「また新しいバレーボールの盛り上がりがここまでつくられているのは素晴らしいこと。これからリーグの盛り上がりが続くように僕らのバレーボール面で努力しないといけないし、様々なところに目を向けたりしないといけないと感じました」と深津旭弘。大竹壱青も「僕は東京体育館であれだけお客さんが入った前でプレーするのは初めて。すごく楽しいと思いました。これからも、このいい環境でバレーをしていけると思うとワクワクしています。ただ、これだけではなく、僕らがバレーをもっと頑張って、協会と一緒に盛り上げていければと思います」と続いた。
柳田も「代表じゃないと体験できない環境を国内リーグで実現しているということは、これからの将来のバレーボール界にとっても大きな影響を与えている。次世代の選手からしてもこの環境でやりたいと思える。今後は我々がプレーで見せることによって相乗効果で、いろいろな人に影響与えるリーグにしたい」と語った。希望に溢れた開幕戦。リーグ戦は各チーム年間44試合の長丁場だ。リーグ側のアクションはもちろんこと、アリーナに足を運ばせるための各チームの取り組みにも注目したい。
(文・写真/杉浦泰介)