今回、徳島の監督になりました斉藤です。アイランドリーグで、また選手たちで野球ができることをうれしく思っています。というのも昨季限りで愛媛のコーチを退団することになった時、僕の心の中にはまだ情熱の炎が消えていなかったからです。リーグの鍵山誠CEOに「まだ、どこかで教えたい」と希望を出していました。
 監督は初の経験ですが、僕の中では愛媛時代同様、打撃コーチという意識です。監督だからといって、選手と一線を引くのではなく、一緒になって成長していきたいと考えています。

 昨季まで徳島に対しては、相手ベンチから見ていて足のあるチームとの印象を抱いていました。ただ、機動力が有効に使えていたかというと、そうではありません。盗塁失敗でみすみすチャンスをつぶし、こちらとしては助かったケースが何度もありました。ですから今季は状況判断をしながら、機動力をより効果的に使えるよう意識付けをしていきたいと思っています。

 そして、足を使って得点圏に進んだ走者をホームに還す長距離砲の育成も課題です。その点では、元ロッテの大谷龍次と練習生から選手登録した中川竜也(JR四国)に期待しています。2人とも修正すべき点は明確です。パワーはあるものの、その使い方がうまくありません。力が入りすぎていて、変化球への対応に難があるのです。

 これは僕も現役時代によく言われてきたことですが、常にフルスイングするだけがバッティングではありません。ホームランボールは確実に仕留めることは当然として、そうではないボールをいかに8分の力で捉えるか。ここが打者として成功するかどうかの分かれ道です。2人には新チームになって、そのことを頭にこびりつくくらい言っていますから(笑)、シーズンになって変化が生まれるといいですね。彼らが揃ってクリーンアップを打つようになれば、いい打線が組めると考えています。

 投手陣では新加入で地元出身の2人の右腕に注目です。まずは鳴門高出身の富永一(アークバリアドリームクラブ)。彼の良さはストレートで三振が取れるところにあります。140キロ台の速球はボールにスピンがよくかかっており、キレを感じました。スライダーとカーブも持ち合わせており、先発で活躍できる投手です。早速、26日の阪神では先発させようと考えています。NPBのスカウトにしっかりアピールできれば、1年でドラフト指名を受けることも不可能ではありません。

 もうひとりは阿南工高に在籍していた河野(かわの)章休(未来高)です。まだ18歳になったばかりですが、変化球でストライクが稼げ、まとまっています。球速は130キロ台後半で、鍛えれば140キロ以上を投げられるようになるでしょう。高校時代はケガをして、野球を一時断念した過去もあるようですが、トレーニングを見ていても体力に不安は感じません。彼にも先発として経験を積ませ、近い将来、NPBに送り込みたいと思っています。

 2月からの練習、オープン戦を通じ、選手たちの役割分担は明確にする方針です。投手ならば先発なのか、中継ぎなのか、抑えなのか、打者ならば1、2番なのか、中軸なのか、下位なのか。それにより、各ポジションに応じた練習や準備をしてもらいたいと考えています。

 徳島は球団創設以来、まだ1度も優勝したことがありません。もちろん試合をしている以上、勝つこともあれば負けることもあります。大切なのは失敗や敗戦を次の試合での勝利に結びつけることです。今回、私が監督になり、新しく島田直也投手コーチが就任したことで、チームは変化の時を迎えています。この機会に選手たちもぜひ変わってほしいものです。

 今までのところ、選手たちはしっかりと自主トレを積み、練習にも真剣に取り組んでいます。新しいインディゴソックスを球場でお見せできそうです。ファンの皆さん、ぜひ開幕を楽しみにしていてください。1年間、よろしくお願いします。


斉藤浩行(さいとう・ひろゆき)プロフィール>: 徳島インディゴソックス監督
1960年5月10日、栃木県出身。宇都宮商から東京ガスを経て、82年にドラフト2位で広島入り。パワーを武器にポスト山本浩二として期待を集める。目のケガもあって1軍ではなかなか活躍できなかったが、2軍では3度の本塁打王を獲得。ファーム通算161本塁打は最多記録として残っている。89年に中日、91年に日本ハムへと移籍し、92年限りで引退。06年からは愛媛のコーチを6年間に渡って務めた。11年より徳島の監督に就任。現役時代の通算成績は228試合、打率.196、16本塁打、41打点。
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