日立、地元・秦野大会で2試合ノーヒットノーラン PS進出7チーム出揃う 〜JD.LEAGUE〜
女子ソフトボールリーグの『ニトリJD.LEAGUE2024』は18日から21日にかけて第12節が各地で行われた。地元・秦野大会に臨んだ東地区首位の日立サンディーバは、18日に坂本実桜、20日には田内愛絵里がノーヒットノーランを達成するなど、3戦全勝。引き分けを挟み5連勝で首位をキープした。レギュラーシーズンはあと1節を残し、東地区は日立、ビックカメラ高崎ビークイーン、戸田中央メディックス、ホンダリヴェルタの4チームのポストシーズン(PS)進出が確定。西地区は優勝したトヨタレッドテリアーズのほかシオノギレインボーストークス兵庫、SGホールディングスギャラクシースターズがPS進出を決めた。
◇東地区秦野ラウンド
田内、初のノーヒットノーラン
デンソーブライトペガサス
0=0000000
4=100030X
日立サンディーバ
勝利投手 田内(7勝1敗)
敗戦投手 坪野(7勝9敗)
本塁打 (日)加減1号3ラン
「初回から意識していました。金曜日に後輩の坂本がノーヒットノーランをしたので私も、と思っていました」
ヒロインインタビューでそう語ったのが田内だ。トヨタから移籍4季目の27歳。坂本は岡山・創志学園高校の3学年後輩にあたる。18日の太陽誘電ソルフィーユ戦で、坂本がノーヒットノーランを達成していた。
田内は身長160cmと小柄ながら、力強い速球を持ち味とするサウスポー。先頭打者をサードフライに打ち取ると、セカンドゴロ、空振り三振とほぼ完璧な立ち上がりを見せた。
「いつでもどのイニングでも点を取ってくれるチーム。私が守っていればいつか点を取ってくれると思っていました」と田内。初回にいきなり援護点をもらった。2死三塁のチャンスで4番・捕手の山内早織がライト前に弾き返し、三塁ランナーの藤森捺未がホームに還った。
援護点をもらった田内は快調なピッチングを続ける。先頭の白石望美にデッドボール。続く打者のショートゴロの間に得点圏にランナーを許してしまったものの、川畑瞳、住友ゆづきを連続三振に切って取った。
その後もゼロ行進を続ける田内を打線が援護したのは5回裏。2死二、三塁の場面、代打で登場したルーキーの加減愛華がライトへ3ランホームランを放った。村山修次監督が「遠くに飛ばせる魅力がある。本人とは三振かホームランくらいの気持ちでいい、と話していました」というスラッガーが、JD.LEAGUE1号だ。これで4-0。この日の田内には十分すぎる援護射撃となった。
6回終了時点で2死球のみ、ヒットを1本も許さなかった田内は7回表もマウンドに上がる。1死から4番の白石に四球を与え、続く5番ミア・デービットソンに対し、低めのボールがやや真ん中に入り、センターへ運ばれた。ここはセンターの唐牛彩名がキャッチ。次の川畑をショートフライに切って取り、ノーヒットノーランを達成した。
田内はウイニングボールを手にした杉浦穂華とグラブタッチ。マウンドを降りる際も表情を崩さなかった。試合後、話を聞くと「ミアのセンターライナーが自分的には納得のいかないボールだったので、反省しなきゃいけないなという気持ちが強かったんです」と明かした。トヨタ時代を含め社会人になってから初のノーヒットノーランにも冷静だった。
日立はこれで引き分けを挟み5連勝。東地区首位をキープする。好調の要因を選手たちはこう見ている。「思考が停止しない選手が多く、それが層の厚さに繋がっているのだと思います」とは田内。キャプテンの坂本は「自分たちがやりたいソフトボールを見せることで結果がついてくる。まずは日立サンディーバらしくプレーしていく。あとは課題を試合までの期間に密に話し合えていることが全員で勝ち切れている要因」と口にする。副キャプテンの藤森は「みんながソフトボールを楽しんでいる」と言い、こう続けた。「勝ちに貪欲になる中、1人1人がチームに合わせず、自分のやりたいことを貫いているのが結果に繋がっている」
今季は主軸を担った坂本結愛、山口みどり、ハンナ・フリッペンが抜けたが藤森らが飛躍し、総得点は第12節終了時点で140得点を挙げている。2試合を残して、既に昨季の総得点を上回っている。胡子路代コーチの就任もヒットした。村山監督も「各選手に適切なアドバイスをしてくれている」と語った。この日、2位のビックカメラ高崎が敗れたため、日立とのゲーム差は2に開いた。残り2試合を1つでも勝てば日立の東地区優勝&ダイヤモンドシリーズ進出が決まる。坂本が「まずは本庄2戦を2連勝して勢い付けていきたい。リーグで出た課題を、プレーオフまでに詰めていきたいと思います」と話せば、藤森も「まだまだ成長できる。今週の3連戦の課題があった。常に成長し続けるスタンスは変えず日立のやり方で頑張りたい」と述べた。
6月1日以来のリーグ戦白星
大垣ミナモ
1=0000010
3=010200X
太陽誘電ソルフィーユ
勝利投手 曽根(3勝2敗)
敗戦投手 三堀(3敗)
ゲームセットの瞬間、マウンド上の曽根はん奈は胸を叩いて吠えた。「勝利するための最後の1球を投げられたことがうれしかった。何よりチームが勝てたのが本当に良かった」。天真爛漫なイメージのある曽根が、闘志溢れる表情を見せたのは、チームが6月1日以来、白星から遠ざかっていたこととも無関係ではあるまい。
先発は林愛友だった。1回表に2本のヒットとフォアボールで2死満塁のピンチをつくったものの、なんとか踏ん張り、ゼロで抑えた。山路典子監督は早くも2回から曽根はん奈を送った。リリーフ待機の曽根は予定より早い出番にも「リリーフが得意なので、自分的に不安はなかったです」と慌てなかった。三者凡退に切って取り、味方の援護を待った。
すると打線はその裏、7番・髙橋舞里が1死一塁の場面でタイムリースリーベース。センター前に転がった打球がイレギュラーしてセンターが後逸するという運も味方し、1点を先制する。4回裏には代打・竹田采実のタイムリーと相手のバッテリーエラーで2点を追加した。曽根は2回から最終回までの6イニングを投げ切り、大垣ミナモの反撃を1点に抑えた。
リーグ戦の連敗を11でストップした。山路監督も「どんなかたちででも今日は勝つことを目指してやっていこう、と選手たちに話していました。林もピンチをつくりましたが、1回をゼロで抑えてくれた。今日はピッチャーが頑張ってくれた」と総括した。
日本リーグ時代に16年から2年連続準優勝するなど上位に食い込んでいた太陽誘電も主力選手の移籍、引退で戦力ダウンし、近年は苦戦が続く。JD.LEAGUEになってからも東地区5位、6位とプレーオフに進めていない。今季もエース格の曽根ら経験のある選手たちがケガで出遅れた。その選手たちが戦線に戻ってきても勝ち星を掴めない時期が続いた。
「若いチームなのでヘコンでしまうこともありました。下位ではありますが、元気を出して上位チームに食らいついていく姿勢は忘れないでいこうと、話していました」と曽根。明るいキャラクターでチームを明るく照らす。今季は既にプレーオフ進出の可能性は途絶えているが、残り2試合に今後への兆しを見出したい。
(文・写真/杉浦泰介)