4月23日に有明コロシアムで開かれる予定だった「SRC17」を中止すると、突然、主催団体のワールドビクトリーロードが発表した。今後の団体の存続も危うい状況にあるらしい。「DREAM」も(2月3日の時点で)、次回大会の開催を決められずにいる。それはK-1も然りだ。日本のメジャー格闘技団体に元気がない。
(写真:昨年末のK-1 WORLD GPやDynamite!!で圧倒的な強さをみせたアリスター)
 だが、暗いニュースばかりでもない。ファン待望のスーパーイベントが間近に迫っている。「世界最強を決める」という形容詞に相応しい豪華な顔ぶれによる『ヘビー級GPトーナメント』が、2月12日(現地時間)、米国ニュージャージー州イーストルーサーフォードのアイゾッド・センターで開幕するのだ。これは米国の総合格闘技団体『Strike force』と『M-1 Global』の共催によるものである。

 このトーナメントには8選手がエントリーしており、組み合わせは以下のように決定している。
 エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア/元PRIDEヘビー級王者)vs.アントニオ・シウバ(ブラジル/元Cage Rage & EliteXCヘビー級王者)
 アンドレイ・アルロフスキー(ベラルーシ/元UFCヘビー級王者)vs.セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/PRIDEグランプリ2004ベスト4)
 アリスター・オーフレイム(オランダ/現Strike force & DREAMヘビー級王者、K-1 WORLD GP2010優勝)vs.ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル/AACC 99キロ以上級で2007、09年優勝)
 ジョシュ・バーネット(米国/元UFCヘビー級王者、現パンクラス無差別級王者)vs.ブレット・ロジャース(米国)

 世界最強と評され続けたヒョードル、DREAM、Strike force、K-1の3冠王者であるアリスター、実力者ジョシュ、昨年6月にヒョードルからタップを奪ったファブリシオ……。これだけのメンバーが揃ったならば、大いに期待できる。かつてヒョードルとアントニオ・ホドリコ・ノゲイラ(ブラジル)が覇権を争ったPRIDEヘビー級GPの再現、いや、それ以上の激闘が繰り広げられることだろう。数ある総合格闘技団体は各々でチャンピオンを決めているが、このトーナメントを制したものこそが真のヘビー級王者と観る者から認められることになる。また、その後に、このトーナメントの王者と現在のUFCヘビー級王者ケイン・ヴェラスケス(米国)が闘う流れになれば、興味はより増す。

 気になるのは、この『ヘビー級GPトーナメント』の日本開催の動きがあること。Strike forceのCEOを務めるスコット・コーカー氏は、1月27日(現地時間)に次のように話している。
「4月10日(米国では4月9日)に日本で準々決勝2試合を行ないたい」
 まだ正式発表はされていないが、ヒョードルvs.シウバ、アルロフスキーvs.ハリトーノフの2試合をニュージャージーでの開幕戦で行ない、アリスターvs.ファブリシオ、ジョシュvs.ロジャースを日本で……との構想のようだ。Strike forceとDREAMは友好関係にある。よって、大会運営にはDREAMが協力する模様で実現の可能性は高い。

 2007年にPRIDEが消滅していて以降、日本でヘビー級の実力選手同士のスーパーファイトは行なわれていない。スピードとテクニックで唸らせてくれる軽中量級ファイトもよいが、「最強」のフレーズは、やはりヘビー級にこそ相応しい。ド迫力の闘いを日本のファイティングステージで堪能したい。

 格闘技は下火……と言われる昨今。だが、外資の参入により、意外な盛り上がりを見せる可能性は十分にある。
 最後にトーナメントの予想を。◎(本命)はアリスター、○(対抗)はヒョードル、▲(穴)はジョシュ。

----------------------------------------
近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)ほか。最新の編著『絶対、足が速くなる!』(日刊スポーツ出版社)が好評発売中。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
◎バックナンバーはこちらから