相模原DB、着々と“増緑中” ~リーグワン~

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『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE』(リーグワン)のディビジョン1は今季からプレーオフトーナメント(PO)進出チームが従来の4から6となり、各チームの試合数も2戦増えた。これにより昨季は下位に甘んじたチームも鼻息荒く、PO争いは例年以上に激化すると見られている。一昨季10位、昨季9位の三菱重工相模原ダイナボアーズは、グレン・ディレーニーHC&SH岩村昂太キャプテン体制3季目を迎え、虎視眈々と上位進出を窺っている。8日には現役南アフリカ代表のWTBカート=リー・アレンゼの加入が発表された。

 

 秋分の日に、ダイナボアーズのホストエリアである神奈川県橋本市にある商業施設「アリオ橋本」で「ダイナボアーズフェスタ2024 supported byキリンビバレッジ」が開催された。広大なショッピングモールをイベント会場に使った3度目の“お祭り”は今年も盛況。ダイナボアーズの広報担当によれば過去最多の来場者6000名が詰め掛けたという。3度目の開催ということもあり、過去のダイナボアーズフェスタで販売されたグッズを纏いダイナメイト、ウリボアーズたちがアリオ橋本に集まった。参加者に聞くと、選手が各エリアを担当するスタンプラリーの列も例年以上だったようだ。

 

 スタッフ、選手たちも年々、この緑が増していくのを感じている。
「毎年、人も多くなっていますし、エナジーもすごく伝わってきて、自分たちに興味を持ってくれていると感じています。毎年、楽しいイベント」とディレーニーHCも笑顔を見せる。キャプテンの岩村が「毎年、ファンの方々に感謝の気持ちを伝えられるイベントのひとつ。1年に1回ですし、ここまでファンの方々と触れ合える時間はないので楽しみにしていました」と語れば、チーム最年長のHO安江祥光が「毎年来てくださるダイナメイト・ウリボアーズ(ダイナボアーズファンの総称)の方は増えていますし、グラウンドより密に触れ合える機会に僕たちも力をもらえます」と喜んだ。

 

 会場が緑に染まる光景は、選手のエネルギーとなる。FB石田一貴は「年々、密な関係になっている。毎年お会いする方もいれば、初めてお会いする方もいる。来場者は増えていると感じます。試合で入場する際、スタジアムが緑色に染まっていると気合いが入りますし、エキサイティングな気持ちになります」と口にした。岩村はファンのみならずチームスタッフへの感謝を述べた。
「事業スタッフを含め、集客に尽力してくれている。来てくださった方々が我々のプレーを見て何かを感じてくれてファンが増える。グラウンドにたくさん人が来てくれることが我々の力になる。いいサイクルが生まれていると感じます。ファンの方々はもちろんですが、事業スタッフにも感謝。結果というかたちで恩返ししたいです」

 

 午前11時からスタートしたトークショー。まずは石井晃GMは「これまで以上のインパクトをリーグ、日本ラグビーに残したいと思っています。皆さんと一緒にスタジアムで感動を共有できる場面をたくさんつくっていきたい」とファンに誓った。ディレーニーHCが日本語で挨拶し、通訳のピックン ダグラス氏が英語で訳すという逆パターンを披露。アドリブでコンビネーションの高さを見せ、会場を沸かせた。

 

 ディレーニーHC体制は今季で3シーズン目を迎える。キャプテンは岩村が引き続き任される。指揮官が「このチームをリードするのに彼ほどふさわしい人間はいない。過去2シーズン、成功したところの真ん中にいるのがコウタ。人として素晴らしく、リーダーとしても間違いない。『チームにいてくれてありがとう』と言いたい」と全幅の信頼を寄せる30歳のスキッパー。岩村は「昔いたチームのHCがよく言われたのが『いい競技者であるためにはいい人間性が必要』ということです。その言葉はずっと残っている。グラックス(ディレーニーHC)自身も素晴らしい人間。僕もああいう人間になりたいなと思いながら、いろいろなことを学ばせてもらっています」と話した。

 

 D1昇格以降、ひとつずつ順位を上げている。ハードワークをDNAとするチーム。岩村は厳しい練習を課される中、成長も感じ取っている。「毎年キツさが違う。一昨シーズンはフィットネス。昨シーズンはフィットネスに加えて、どんな場面でも競い合うように闘争心を煽り立てられた。今シーズンはウエイト、フィットネス、コンタクトとハードな練習が続いている。ひとつひとつレベルアップしていると感じます」。それはベテランの安江も同じで「毎年練習内容も厳しくなっている。それが幹として礎となり、成長している過程を感じられている。それがどんどん太くなっていけば、優勝を目指せるチームになると思います」と口にしている。

 

 チームの成長はこんなところにも表れている。5月の代表合宿に石田一貴が参加。パリオリンピックには奥平湧が出場した。9月のパシフィックネーションズカップ準決勝のサモア代表戦でエピネリ・ウルイヴァイテが初キャップを刻んだ。「正直、悔しさはある」と石田。チームメイトの活躍が刺激となり、いい競争を生むのだろう。チーム最年長の安江は「僕の中で年齢は数字でしかない。僕を見て若い選手が“あんなオッサンに負けてたまるか”と感じてほしい。僕自身、若い選手からパワーをもらってここまでやってこれた。一緒に成長していきたい」と意気込む。

 

 来る新シーズンは従来の16試合から18試合に増える。PO進出枠が4から6へ増えたことに関し、ディレーニーHCは「ハードで難しいシーズンになる」と言い、こう続けた。
「どのチームにとっても目標が近くに見えるから、モチベーションが上がる。全12チームが“自分たちがトップ6に入るべきだ”と思うはず。自分たちが一貫性を持ってプレーできれば、自然と結果はついてくる。3年前に私たちが『トップ6を目指す』と掲げていたら、『まだウチには早いかも』と言っていたかもしれないが、そこは自分たちが成長している証拠かなと思います」

 

 岩村は言う。「このチームでもっといい景色が見たい」。緑に染まるスタジアムが勝利に沸く姿を――。

 

(文・写真/杉浦泰介)

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