りくりゅう、銀でも悲壮感ゼロな理由 ~フィギュアスケートGPシリーズ第4戦 NHK杯~
フィギュアスケート・グランプリ(GP)シリーズ第4戦、NHK杯のフリースケーティング(フリー)が9日、国立代々木競技場第一体育館で行なわれた。前日のショートプログラムにて71.90点で首位に立った“りくりゅう”こと三浦璃来/木原龍一ペアは、フリーでのコンビネーションスピンのミスなどが響き137.55点。合計209.45点とし、2位でNHK杯をフィニッシュ。スケートアメリカとの成績を総合し、GPファイナル進出を決めた。
準優勝に終わったりくりゅうだが、悲壮感は全くなかった。なぜながら、理由がはっきりしていたからだ。演技後、氷上で木原が右手の人差し指を立てて「あそこ1つだったね」と三浦に語り掛けた。
木原の言う「あそこ1つ」とは、プログラム曲の「adios」が変調するあたりに設定したペアスピンのことだった。
演技後、木原は振り返った。
「わからないんですけど、溝なのか……。ランディングの痕なのか……。まぁ、良いお勉強になりました(苦笑)」
木原のブレードが氷の溝か穴にはまってしまった、という。
三浦は「私たちが組んで、初めてのペアスピンのミスだった。“珍しいよね”って。ペアスピンは今後、もっと気を付けて練習しようね(笑)」と茶目っ気たっぷりにこの件に触れた。
アクシデントがあってもひきずらなかったのは、経験を積んできたふたりのなせる業だった。「ペアスピンが終わったあとに休憩ポイントがあるんです。そこで龍一くんがめっちゃ笑っていた(笑)。あ、大丈夫だ、と落ち着きました」と三浦。「もう足を着いた時点でノーカウントになってしまう。どうしようもなかったので、気持ちを切り替えて休憩しようと思った(笑)」と木原は返した。
この時点で優勝は厳しいと察した木原。これ以上、大崩れをしない策に踏み切り、きっちりとGPファイナル進出を決めてみせた。木原は「もう、32歳なので」と報道陣の笑いを誘った。銀メダルに終わった理由が、アクシデントだとはっきりわかっていたからこその、悲壮感ゼロだった。
(文/大木雄貴)