天羽進亮(東洋大学体育会ラグビー部/徳島県吉野川市出身)第1回「向こう傷を恐れぬ鉄紺の司令塔」

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 ラグビーの司令塔と言えば、「10」を背負うスタンドオフ(SO)が想起されるだろう。パス、ラン、キックのスキルを駆使し、チームのアタックを司る花形ポジションと言ってもいい。「やっぱり僕はタックルが好き」。全国大学選手権2度目の出場を果たした東洋大学の3年生SO天羽進亮(あもう・しんすけ)は、異色の司令塔と言えるかもしれない。

 

 東洋大ラグビー部の福永昇三監督は、天羽をこう評価する。

「1年生の時からコンタクトプレーに対し、全く臆することなく高い強度で行える。そこは魅力です。一般的には珍しいと捉えられますが、私からするとトニー・ブラウンと長く一緒にやっていたので、違和感はないかもしれません。ダブッて見えると言ったら、大袈裟に聞こえるかもしれませんが、ああいうスタンドオフになれるポテンシャルを秘めている」

 

 福永が名を挙げた「トニー・ブラウン」とはニュージーランド出身で、身長177cmと決して大柄ではないが、オールブラックス(ニュージーランド代表)18キャップを記録したSOである。日本では2005年度から10年度まで三洋電機ワイルドナイツ(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)で活躍。日本選手権2連覇、リーグ3連覇に貢献した。三洋電機OBの福永とは元チームメイトである。ブラウンはボールを持てばスキルフルな司令塔だが、相手ボールとあれば必死に食らいつく、闘争心剥き出しのプレーも持ち味だ。

「性格的には心底明るい。強者を相手にしてもまったく動じない。それは1年生の時から感じていました。期待に応え、先頭に立って身体を張ってくれている」

 

「パッションでチームを引っ張る」

 天羽も身長174cm、体重82kgと、ブラウン同様、サイズ的に大きい選手ではない。「パスが巧いだけでは東洋のスタンドは任されない。身体は張らないと厳しいので」と天羽。ブラウンのようにブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)でジャッカルを連発するタイプではないものの、身を挺してディフェンスする姿はチームを鼓舞するには十分。監督の福永も「パッションの部分でチームを引っ張っている」と称える。

 

 天羽のぶつかり合いを厭わぬプレーぶりは、11月24日、埼玉・熊谷ラグビー場で行われた関東大学リーグ1部・日本大学戦でも見られた。3位の東洋大は勝てば大学選手権出場が決まり、6位の日大は2部との入れ替え戦を回避できる。1年前と同じ状況だ。当時は12-20で敗れ、2年連続となる全国大学選手権出場を逃していた。昨年も「10」を背負った天羽は、リベンジの機会に燃えていた。

 

 26-14とリードして迎えた後半7分、前半パスを散らしていたことで相手のディフェンスラインは広がっていた。そのスキを突き、斜めに走ってゲインを切る。最後はタックルにきた相手を肩で吹っ飛ばし、インゴールライン内に侵入。東洋大後半、最初のトライを挙げた。チームを勢いづけるには十分なトライ。その後、4トライを積み重ねた東洋大は日大を57-33で下し、関東大学リーグ過去最高順位の2位で、同大2度目となる全国大学選手権行きを決めた。

 

 この試合、多くの得点に絡みプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に輝いた天羽。今季2度目の受賞である。鉄紺の司令塔としてチームを牽引する。彼の父親はラグビー指導者だ。当然、幼少期から楕円球を追いかけていたかと思えば、天羽がラグビーを始めたのは高校からだった。

 

(第2回につづく)

 

天羽進亮(あもう・しんすけ)プロフィール>

2003年4月7日、徳島県吉野川市出身。小・中学校はサッカー部に所属。城東高校ラグビー部でラグビー部に入部し、ラグビーを始める。同高で1年時からレギュラーの座を掴み、1年時はフランカー、2年時からスタンドオフを務めた。全国高校ラグビー大会(花園)には3年連続で出場した。22年に東洋大学入学。2年時からスタンドオフのレギュラーに。3年時は秋のリーグ戦全7試合でスタメン出場し、2年ぶり2度目の全国大学選手権出場を果たす。身長174cm、体重82kg。リフレッシュは温泉に入ること。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

 

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